2019年の甲子園は、履正社が優勝を果たした。この世代は2023WBCでも活躍した佐々木朗希や宮城大弥、プロ2年目に9勝を挙げた奥川恭伸など、これからの日本を背負っていくような選手たちが数多くいる。今回は、この世代の高校時代を振り返っていく。

令和の怪物・佐々木朗希は予選決勝で登板回避

この世代といえば、甲子園開幕前から注目されていた佐々木朗希(現・千葉ロッテマリーンズ)の決勝戦の回避が賛否両論となった。

この判断に関して、「未来があるので。素晴らしい舞台が決勝戦を勝てば待っているのがわかっていたが、今までの3年間のなかで、一番壊れる可能性が高いかなと思って私には決断できませんでした」と大船渡高校の国保陽平監督(現・野球部部長)はコメントを残した。

高校生の段階で、すでに160km/hを記録していた佐々木ほどの素材の選手は、強豪私立でもなかなかお目にかからない。当時から大型投手としてみても、非常に期待値が高かった。

“たられば”にはなるが、佐々木を擁する大船渡が甲子園に出場していたら、大会序盤はなかなか打ち崩せる打者はいなかっただろう。

投手も複数枚いたことから、チームとして機能していればベスト8には進出できていた可能性も高い。好投手を立て続けに攻略をした優勝校の履正社と対戦していれば、素晴らしい試合になっていたのではないだろうか。

ただ、佐々木の将来を考えて大事に起用していたのだろう。今では球界屈指の投手として活躍している。

プロ入り後、投手コーチ時代から見ている吉井理人監督も、シーズン中にバテてきたら登録を抹消するなど、佐々木の身体には配慮しているのがわかる。

大会No.1投手vs強力打線! 履正社が奥川恭伸を攻略して初優勝

この年の夏の甲子園決勝は、春のセンバツ初戦と同じカードとなった。

履正社打線が、ホンモノだということを星稜の奥川恭伸(現・東京ヤクルトスワローズ)相手でも見せられたのではないだろうか。

大会を通じてチーム全体として高い打力を発揮した履正社だが、やはり春のリベンジの思いは強かったのだろう。

奥川相手に17三振という屈辱的な敗退が夏に向けての成長につながり、結果的にはその奥川を攻略しての初優勝という、このうえない令和最初の夏になったのではないだろうか。

打線は夏から大きく成長したが、この大会では初戦で霞ヶ浦の鈴木寛人(元・広島東洋カープ)、2回戦では津田学園の前 佑囲斗(現・オリックス・バファローズ)を難なく攻略。準決勝でも、明石商の中森俊介(現・千葉ロッテマリーンズ)を攻略したのだ。

さらに、投手陣もエースの清水大成はもちろんのこと、岩崎峻典の成長が著しく、二枚看板として実力をつけた。

対する奥川は、この大会ではクレバーかつ圧倒的な投球を見せていた。

特に象徴的なのが、智辯和歌山戦である。この試合を通じて延長戦を投げ切った奥川には、ものすごい底力や馬力を感じた。

また、奥川は智辯和歌山戦以外の旭川大戦、リリーフで登板した立命館宇治戦、中京学院大中京戦では100%の力を出していないように思えた。

これは、センバツの反省を生かし、追い込んだあとの無駄な力みがなくなり、連投や次の試合も見据えたクレバーな投球をしていた。

その結果、準決勝終了までを見ると、32回1/3を投げて防御率は脅威の0.00を記録。奪三振も45を記録しており、まさに大会の主人公だったに違いない。

ただ、この大会では多くのイニングを投げていたこともあり、決勝はベストコンディションではなかったのだろう。

そのことが影響し、履正社打線から空振りを奪えずに捉えられる場面が随所に見受けられた。

特に、3回に甘くなった緩い変化球をバックスクリーンに放り込んだ履正社の井上広大(現・阪神タイガース)は、この大会を通じて良い場面で打点をあげた。

星稜も7回に追いつき意地を見せたが、それを上回る形で疲れが見えていた奥川を8回に攻めたて、勝ち越して追加点をあげた履正社打線はさすがだった。

この試合で活躍を見せた井上は、今シーズン一軍でも出場機会をもらっている。将来的には、右の大砲として期待される。

また、奥川は2年目に勝ち頭として9勝を記録。しかし、それ以降は怪我に苦しんでいる。2年目のピッチングを見ると、エースにならなくてはならない存在のため、年齢的にもまだまだ期待していきたい投手だ。