ニュースクランチで「ゴジキの新・野球論」を連載中の野球著作家・ゴジキ氏。現在は2番目の長期連載(毎週更新のコンテンツ)で、連載開始からランキングで常にTOP10入りしている大人気連載となっている。今回は、7月に2冊の新刊を発売することを記念してインタビューを敢行。野球を好きになったキッカケをはじめ、テレビ観戦と球場観戦で見るポイントの違いや、日本プロ野球と高校野球、メジャーリーグそれぞれの面白さなどを語ってもらった。

夏休みにテレビで見た「野球」が原点

――これまで野球著作家として活動され、さまざまな媒体に寄稿されていますが、そもそも野球を好きになったキッカケはなんでしょうか?

ゴジキ 小学生の頃、野球が地上波で放送されていたので、テレビで見たのが始まりです。その頃のスター球団といえば巨人でした。それと、野球を見始めた季節がちょうど夏だったので、お昼は高校野球もやっていたんですね。

昼間は高校野球を見て、夜は巨人戦という流れで一日中、野球を見ていました。最初の頃は、昼も夜もテレビで放送されている、このスポーツはなんだろう?っていう感じでした。高校野球とプロ野球の区別もついてなかったですね、選手名もわかっていなかったです(笑)。純粋に打って守って走っている姿がかっこいいなと思っていました。

――現在、野球についての仕事をされているということで、たくさん試合を見られていると思います。プロ野球は試合開始が同時刻の場合も多いと思うのですが、テレビ・パソコン・スマートフォンなど複数の端末で同時視聴しているのですか?

ゴジキ 基本的には1試合だけを集中して見ています。ただ、気になる試合がカブったときは、パソコンやiPadなどで同時視聴します。最近ですと、センバツ高校野球と2023WBCの時間がカブっていたので、同時視聴という形をとっていました。

――すごいですね。ゴジキさんが試合を見るうえで注目しているポイントがあれば教えてください。

ゴジキ 基本的には、試合の全体像から見ていきますね。例えば、高校野球の場合だと、強豪校と呼ばれるチームって初回から作戦を立てて動いてきたりするんですよ。逆に、最初は好きに打たせるっていう方針のチームもあったりするので、序盤戦でどういう戦いをしているか、戦術などの使い分けなども見ていますね。

あとは、トーナメントを勝ち進むと戦術が変わることもあります。1回戦は積極的にバットを振っていたのが、準決勝とか決勝になってくると待球作戦になったり。そういったあたりは、トーナメントならではの面白さでもありますよね。

プロ野球はリーグ戦なので、ほぼ毎日、試合が行われます。なので、まず先発投手やスターティングメンバーを見ます。「相手投手との相性で、この選手がスタメンか」「この選手、このタイミングで休ませるのか」など。ベテラン選手はすごく頼りになる存在ですが、フル出場は難しいと思うので、休みも挟んであげないと体力的に厳しいでしょうし。そういうリーグ戦ならではの作戦を、スタメンから読み解きます。

試合が始まったら、徐々に見るポイントを絞って狭くしていきます。簡単にいうと、プレーの内容とかですね。「この打者は、どんな球を狙っているのか?」「投手・捕手は、どんな配球でアウトを取ろうとしていのか」といった部分です。

選手の細かい動きがわかる球場観戦のススメ

――なるほど。球場に足を運んで現地観戦されることもありますか?

ゴジキ もちろん、あります。2023WBCも東京ドームに韓国戦を見に行きました。グッズ売り場が2~3時間待ちの大盛況でしたね。僕が見たかったのは、大谷翔平選手(ロサンゼルス・エンゼルス)のバッティング練習でした。

▲2023WBCは東京ドームに足を運んだ

――相手チームの選手たちも、大谷選手のバッティングに見惚れている姿をテレビで目にしたのですが、実際に生で見ていかがでしたか?

ゴジキ 敵味方関係なく、一挙手一投足を見ていましたね。大谷選手のときだけ時間が止まっている、みたいな。大谷選手のバッティング練習は、日本ハムファイターズ時代も見たことはあったのですが、明確に日本時代とは違うなと感じ、メジャーに移籍して進化していることが自分の目で確かめることができました。

――具体的に、どういった部分に進化を感じましたか?

ゴジキ 身体の大きさ、厚みももちろんですが、打球の飛び具合が全然違いましたね。看板や電光掲示板直撃のホームランが普通というか。ホームランを打つのは当たり前で、その先どこまで飛ぶのか、というレベルになっていました。フェンスギリギリの打球とかは、ほとんどなかったです。練習ひとつとって見ても、ひとりだけレベルが違い、打撃練習だけでお金が取れると実感しました。

――やっぱり、大谷選手はそれだけの存在なのですね。大谷選手以外で印象に残った選手はいますか?

ゴジキ 吉田正尚選手(ボストン・レッドソックス)もすごかったです。初見の投手の球でもちゃんと芯に当てられる、そしてヒットにできるんです。メジャー挑戦1年目で3割近い数字を残せているのも納得ですね。チャンスで回ってきたら打つだろうな、という雰囲気もあります。

――プロ野球を球場で見る際のポイントを教えてください。

ゴジキ テレビでは見られないところを意識して見ています。具体的には仕草などですね。投手であればプレートの立ち位置、打者はバッターボックスのどの辺りで構えているか、などです。

――なるほど。

ゴジキ 守備面でも見えてくるものがあるんです。打球が飛んできたときの動きで、衰えがわかったりします。以前は捕球できていた、アウトにできていた打球が捕れなかったりすると、体が動かなくなってきているのかな? とか。ランナーの場合だと、タッチアップの一歩目が遅くてアウトになってしまうなど、球場でその選手だけ見ているとわかりますね。

――守備やランナーの一歩目の動き出しに注目しているんですね。球場で観戦するときの参考にさせてもらいます。

ゴジキ WBCの話になりますが、準決勝のメキシコ戦で村上宗隆選手(東京ヤクルトスワローズ)がサヨナラタイムリーヒットを打ったじゃないですか。あのとき、サヨナラのホームを踏んだ周東佑京選手(福岡ソフトバンクホークス)の走塁が話題になりましたよね。あれって、テレビだと「どれくらいリードをとっていたのか?」「どこでスタートをきったのか?」とか、あとからしかわからないんですよ。それが現地だと、すべてわかるのがいいですよね。

――現地観戦の際、座席のこだわりはありますか?

ゴジキ 絶対に内野席ですね。理由はシンプルに、より近い位置で選手のことを見られるから。外野席も応援している感じがしていいんですけど、先ほど言った細かい仕草などが距離的に見づらくなってしまうので。