人気お笑いコンビ・ラランド。そのニシダが、初の著書となる小説『不器用で』(KADOKAWA)を上梓した。ニシダ自身も『アメトーーク!』 の「読書芸人」として出演するほどの本好きとして知られ、クズキャラとしてもフィーチャーされる場面が多い彼だが、小説はまた異なった一面を見せており、百戦錬磨の担当編集者いわく「これが初の小説執筆というのが、まるで信じられないほどの巧みさで、毎回驚き、感動していた」と語るほど。

そこでニュースクランチ編集部は、ニシダに小説を書くことになった経緯や苦労した点、また、お気に入りの作家や本の話についてなどをインタビューで聞いた。

▲ラランド・ニシダ【WANI BOOKS-NewsCrunch-Interview】

書くのは楽しいけど打ち合わせは恥ずかしい

――まず、小説を書くことになった経緯をお聞かせいただけますか。

ニシダ そうですね。書かないと死ねないなと思いまして。小説を書くために生まれてきたんで。

――それはツッコんでいいやつですか?(笑)。

ニシダ ハハハハハ!(笑) ちょっと1回、天才ぶってみたいなと思ったんで……。

――(笑)。もともと書く仕事をやりたいという気持ちはあったんですか?

ニシダ エッセイとかコラムを書くお仕事はちょこちょこいただいてて、楽しく書いてました。でも、“小説を書こう”っていう気持ちはそういうお話をいただくまでは正直なかったですね。読むのは好きでしたけど。

――学生時代に何か書いていたことはなかったんでしょうか?

ニシダ 全くなかったですね。日記はつけてましたけど、人に見せようと思って文章を書いたことは、この仕事に就くまでありませんでした。

――小説を書くにあたって担当編集者さんと打ち合わせがあると思うんですが、最初に担当の方に言われたことって覚えてますか?

ニシダ Zoomで会議をすることが多いんですけど、自分で考えた小説のことを担当の方に説明するのがめちゃくちゃ恥ずかしいんですよ。「主人公が~、中学生で~」って照れながら話してたんで、「ハキハキ喋れよ!」って言われたと思います。実際はそんなキツイ言い方じゃなかったですけど(笑)。「ハキハキ喋ってもらえませんか?」って言われた気がします。たぶん、僕がもちゃもちゃ喋ってたんですよ。

――でも、自分が考えた設定を話すのが恥ずかしいっていうのはわかる気がしますね。作ったネタを説明するみたいな感じですもんね。

ニシダ そうなんですよ。めちゃくちゃ恥ずかしいですね。Zoom会議で“あなたが考えた面白いストーリーを発表してください”って言われてるわけですよ。そりゃ、もちゃもちゃした喋り方になりますよ(笑)。その時間が一番ツライかもしれないです。

――最初はツラかったということですが、楽しくなってくるタイミングはありましたか?

ニシダ 書き始めたら楽しくなってきましたね。あまり社交的じゃなくて、一人で何かに入り込むのが好きなタイプなので。今も基本的に楽しいと思いながら書いてますね。

手書きの原稿を自分でスマホで打ち直してます

――ちなみにどういう環境で書かれてるんですか?

ニシダ 僕……じつは手書きなんですよ。

――えっ、そうなんですか?

ニシダ そうなんです、パソコンが使えなくて。タイピングができないんですよ。手で書いたほうがいいですね。ただ、“絶対にパソコンのほうがいいだろうな”と思いながらやってます。

――(笑)。その手書きの原稿を編集者さんが打ち直してるんですか?

ニシダ いや、手書きの原稿を自分でスマホで打ち直して送ってます。

――すごい遠回りな方法ですね! スマホに直接じゃダメなんですか?

ニシダ ダメなんですよ、感覚の話なんですけどね。

――それは面白いですね。

ニシダ 書き始めたころは、手書きで書いてからスマホで打ち直すのが面倒くさかったので、音声の書き起こしアプリを使って、音読して打ち直せないかなと思ってやってみたんですけど、少しでも別の音が入るとそれも書き起こされちゃうんですよ。灯油販売の売り声とか。余計に時間かかっちゃうのですぐにやめましたね。なので、今も手作業で打ち直してます。

――(笑)。昔から小説を読むのは好きだったそうですが、一番フェイバリットな作家や本を教えてください。

ニシダ そうですね……。太宰治は昔からずっと好きでしたね。全集も買いましたし、人生で一番読んでるのが太宰ですね。『畜犬談』っていう短編ですね。すごく面白いです。

――そう言われたから言うわけじゃないですが、ニシダさんの作品はどことなく太宰に似ている感じがします。

ニシダ ホントですか?

――何かに固執している人を俯瞰で見て「変で面白いよね」と言ってる感じが通ずるところがあると思います。正直、この本を読んでニシダさんのことを“ちょっと怖いな”と思いました。

ニシダ えー、うれしいですけど、全然ですよ! 今だってニコニコ笑いながら答えてるじゃないですか!

――(笑)。お腹を見せているようで、腹の底を見せてない感じがしましたね。ここ最近出た芸人さんが書いてる小説のなかでは、この小説が一番だと思いながら読ませていただきました。

ニシダ ありがとうございます!

――テレビで見るニシダさんとは地続きじゃないから、そう感じたのかもしれません。テレビやYouTubeでは「だらしない」「クズ」の面がフューチャーされてますけど、それとは全く別の怖さがありました。

ニシダ ありがたい言葉ですね。もう僕の言ったことはどうでもいいんで、ここのインタビュアーさんが褒めてるところだけ太字にして、記事にしてください(笑)。

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