連載してるときにAマッソ加納に見せたら・・・
――この本で一番のお気に入りはどれですか?
ニシダ 全部好きなんですけど……「焼け石」ですかね。女性が主人公の話なんですが、“女性を主人公にして書けるのかな?”と思いながら書き始めたんです。でも書いてみたら、意外と編集の方からいい反応をいただけて“うれしいな~”って思った記憶があります。
――確かに女性を描くのがうまいなと思いました。ニシダさんの中にそういう気持ちがあるというか。例えば、作詞とかをしても、女性を主人公にした詞が書ける人なんだろうなって思いました。
ニシダ あら、うれしいですね。こんなにちゃんと褒められることがあまりないので。
――そんなことないでしょう!(笑)
ニシダ ホントにないんですよ。
――今回の作品を読んで、周りの方、芸人仲間だったり、事務所の方などから感想を言われたりはしましたか?
ニシダ あんまりないですね……。『小説 野性時代』で連載してるときに、Aマッソの加納さんに「見せてよ」って言われて見せたことはあります。そのときは「よかったよ」って言われましたけど、しっかりは褒めてくれなかったな……と思ってましたね。
――そうなんですか(笑)。
ニシダ 「面白かったよ」とは言ってくれたんですけど。“もっとちゃんと褒めてよ!”って思っちゃいましたね(笑)。
――もしかすると、加納さんは「ヤバッ!」と思ったのかもしれないですね。
ニシダ どうなんですかね……。先日、本屋で1万円分のお買い物をするっていうYouTubeの番組に出たんですけど、そのときのインタビューで「芸人さんでライバルの作家さんはいますか?」と聞かれて「Aマッソの加納さんです」って答えたんです。
そしたら、加納さんも同じYouTubeの番組に出てたんで、それを見たら同じ質問に「瀬戸内寂聴さん」って答えてました。“もうダメだ、同じ土俵じゃねぇや”って思いましたね。
――ちょっと相手にされてない感が…(笑)。
ニシダ “ファイティングポーズとってる俺がバカみてぇだ”と思いましたね(笑)。でも、加納さんの小説は本当に面白いですから。
――近しい方以外の感想は読んだりしましたか? 例えばSNSでの反応であるとか、帯を書かれた宇多丸さんや町屋良平さんの感想など。
ニシダ 宇多丸さんと町屋さんのコメントは、めちゃくちゃうれしかったです。“タレントが本を出す”っていうことに、若干の引け目があったんですけど、お二人の言葉がすごく良くて。だいぶ勇気づけられましたね。あとは、ゲラを読んでくださった書店員さんの感想を読ませてもらったんですけど、それもいい感想で、すごくうれしかったですね。
――宇多丸さんはニシダさんが番組に出演していたりと関係性ががわかるのですが、町屋さんはどういう経緯で帯をお願いしたんでしょうか?
ニシダ 僕が町屋さんの小説が大好きで。作品を読んでいるだけの遠い存在だったんですけど、お願いしたら引き受けてくださいました。すごいうれしかったですね。めちゃくちゃいいことを書いてくださいましたし。文芸誌に町屋さんの小説が載ってるのを読んで、その頃からのファンだったんで。
――文芸誌を読むっていうのがすごいですよね。
ニシダ 文芸誌が好きなんですよね。大学生の頃は全部買って目を通してました。今も月に1~2冊は面白そうなのを買って読んでます。町屋さんの小説が載ってたのは一番文芸誌を読んでた時期で、憧れだったので、本当にコメントをくださったのはありがたいですね。
――本をレコメンドするお仕事をたくさんしてらっしゃると思いますが、ここ最近で読んだ本で良かったものってありますか?
ニシダ なんだろう……。(しばらく悩んで)最近読んだ本のなかでは『田中慎弥の掌劇場』(集英社文庫)が面白かったですね。1600字くらいの短編が40篇くらい載ってるんですけど、全部長編にしてほしいくらい面白くて。田中慎弥さんは好きですね、暗くて。
小説の設定はどう思いついてるかわからない
――小説の設定はどういったところから着想するんですか?
ニシダ どこからなんでしょうね……。そういう方法論が全くなくて。だから、どこから着想してるのか自分でもわからなくて怖いです。
――ああ、わからないから急に出なくなる可能性もあるかもしれないと。
ニシダ そう、毎回なんとかなってきたんですけど。今も新しい作品を書き始めていて、それもなんとかなってるんですけど、冷静に考えたら、どうやってるのかわからないですね……いつも怖いです(笑)。
――例えば、この本だと「テトロドトキシン」は自分が虫歯だった経験があって……とかではないんですか?
ニシダ これは、まだテレビ出たての頃に、平成ノブシコブシの吉村さんと同じ番組に出たことがあって。前室みたいなところで吉村さんが「現代人の寿命が延びてるのは、虫歯治療が発達してるからなんだ。虫歯を治療しないと、毒素が体内に入って死んでしまうから、昔の人は寿命が短いんだ」って話をしていて。その話を思い出して、こういう設定を思いつきました。
――これに関してはキッカケがあったんですね。
ニシダ そうですね、その話が面白いと思ってメモしてたんです。設定を考えないといけないときにメモを見返したら、これがあったので、書いてみよう! と。
――書いたことは吉村さんに伝えたんですか?
ニシダ 伝えられてないですね、連絡先も知らないので……。本当にTV出演がまだ1~2回の頃の話で、知り合いもいないし緊張してるから、前室でも他の人が話してることを聞くしかなかった時期なんですよね、今もそこまで変わらないんですが……。