今年の夏の甲子園が8月6日に開幕した。
多彩な投手陣を活かして昨年夏に優勝した仙台育英の投手陣や、前評判通りのピッチングを見せて、華やかな甲子園デビューを飾った徳島商の森煌誠が話題にあがっている。
この夏の甲子園に向けて発売され、さまざまな媒体・書店でランキングの上位を占めている『戦略で読む高校野球』(集英社)の著者であるゴジキ氏が、21世紀で甲子園を沸かせたエースや2番手、投手陣について語る。
21世紀最強のエースは春夏連覇に導いた藤浪晋太郎
高校野球において、21世紀最強のエースは間違いなく大阪桐蔭の藤浪晋太郎だろう。
藤浪を擁する大阪桐蔭は、春夏連覇を果たしている。『戦略で読む高校野球』にも記載しているが、高校野球史においても夏の甲子園で見せたピッチングは、トップクラスと言っていいレベルだ。
センバツでは粗削りなピッチングだったため先制点を与える場面もあったが、夏の甲子園では驚異の奪三振49、防御率0.50を記録。内容を見ても準々決勝から徐々に調子を上げていき、準決勝の明徳義塾戦と決勝の光星学院戦は完封を果たし、チームを春夏連覇に導いた。
準決勝で対戦した明徳義塾の監督・馬淵氏は「藤浪くんは球威があった。かき回すにも、塁に出られなかった」と白旗を挙げたコメントを残した。
さらに、決勝で対戦した光星学院戦では、準決勝までチーム22打点のうち17打点を稼いだ田村龍弘と北條史也から2つの三振を奪うなどして、合計8打数1安打に抑えた。
決勝では、疲れが見えるはずの最終回に自己最速タイの153km/hを記録。最終的には、14奪三振2安打完封勝利で春夏連覇を飾った。藤浪は春から成長を遂げて、この甲子園では圧巻のピッチングを見せた。
ストレートはもちろんのこと、変化球も高校生離れしており、プロ入りから3年連続で二桁勝利を記録するのも頷ける内容だった。
ライオンズのローテーションを支える2人の甲子園優勝投手
次は高校野球において、夏の甲子園を1人で投げ抜いた今井達也だ。
球数制限が設けられたため、今井が1人で投げ抜いた最後の優勝投手になる可能性は高い。甲子園の成績を見ると、41イニングを投げ、44奪三振を記録し、防御率は1.10。
今井が活躍した2016年から高校野球は高度化になっており、投手のストレートはもちろんのこと、変化球も高速化しているように見えた。
この今井も、準決勝で明徳義塾と対戦している。好投手に対する研究にかなり力を入れているチームだが、それを上回る圧倒的な実力で抑えた。
この世代は、前評判では寺島成輝、藤平尚真、高橋昂也といった好投手がいたが、それを覆すようにどんどんと成長する今井に度肝を抜かれた人は多かっただろう。
甲子園で一気に成長した今井は、54年ぶりの夏の甲子園優勝に導いた。
次は2年生ながらも1人で投げ抜いた高橋光成。
今では、埼玉西武ライオンズのエースだが、2年生ながらも優勝投手に輝いている。
また、高橋の場合は甲子園で50イニングを投げており、2010年代の優勝投手では最多イニングを記録している。内容を見ても、落ちるボールを駆使しながら、1回戦と2回戦は1対0のロースコアゲームに勝利し、3回戦では優勝候補の横浜に勝利した。
この横浜戦以外は全て接戦だったなかで、全試合のマウンドにあがり、防御率は脅威の0.36を記録している。
この成績を見ても、2年生でありながら圧倒的な実力だったことがわかる。