21世紀最強の投手陣はどの高校?
温暖化の影響による天候の変化や球数制限などにより、徐々に高校野球が変わってきた。それによって投手の運用も変化を見せる。
個々の力として見ると、藤浪や今井、高橋、田中、斎藤などのスーパーエースのほうが上になる。
主要投手2人体制を敷いたチームの代表は、2003年常総学院や東北、2007年佐賀北、2012年大阪桐蔭、2015年東海大相模、2017年花咲徳栄といった高校の名前があがるだろう。
ただ、今後の高校野球の制度化や継投戦略を考えると、水準以上の投手を3人以上揃えることが重要になっていくだろう。
まずは、2022年の夏を制覇した仙台育英だ。
エースの古川翼と斎藤蓉を軸に、髙橋煌稀、仁田陽翔、湯田統真といった5人の投手陣をうまく運用した。
決勝戦こそ、先発の斎藤蓉が100球投げたものの、準決勝までは負担がかからず、投手全員が力を出し切れる運用だった。
軸となる投手は古川・斎藤・高橋の3人だが、準決勝では古川と斎藤を温存し、万全な状態で決勝戦を迎え、東北勢として初優勝を成し遂げた。
下記が各投手陣のイニングと球数である。
2回戦:2回 19球
3回戦:2回2/3 53球
準々決勝:4回 52球
・斎藤
2回戦:2/3 11球
3回戦:2回 31球
準々決勝:5回 71球
決勝:7回 100球
・高橋
2回戦:5回 60球
3回戦:3回 46球
準決勝:2回 37球
決勝:2回 45球
・湯田
2回戦:1/3 7球
3回戦:1回1/3 31球
準決勝:4回 84球
・仁田
2回戦:1回 20球
準決勝:3回 61球
これまでの高校野球の継投策は、エースと2番手が1試合ごとで交互に投げたり、1試合で2人の投手が投げることが主流だった。
しかし、昨年の仙台育英の投手起用は画期的だった。
1人の投手が短いイニングを少ない球数で抑え、ブルペンデーのように、次々にピッチャーを変えていく継投策で夏の甲子園初優勝を果たしたことだ。
多くの高校は、短いイニングですら試合を作れずに投手を変えてしまうところが多いなか、ここまでバランスよく投げさせながら失点を防ぐ起用法を確立した。
高校野球の強豪校となると、打線が1巡したら投手の球筋に合わせてくるが、細かい継投によって相手打線の「慣れ」を防ぐこともできた。
また、今年の仙台育英は湯田・高橋・仁田を中心の投手陣を誇っており、試合状況によっては湯田を完投させるなどの柔軟さもあるチームになっている。
次は2018年の大阪桐蔭だ。
2018年の大阪桐蔭の投手陣を見ると、根尾昂、柿木蓮、横川凱のプロ入りした投手の3本柱を揃えた。
左右のバランスもよく、全員プロ入りするほどの実力を持っていた。そのため、誰が先発しても大崩れすることがなく、非常にバランスよく投手運用ができていた。
下記が各投手陣のイニングと球数である。
1回戦:9回105球
2回戦:1回24球
3回戦:4回66球
準々決勝:4回50球
準決勝:9回155球
決勝:9回112球
・根尾
2回戦:8回119球
準々決勝:5回95球
・横川
3回戦:5回78球
3回戦までは全投手先発させて大会中の調子を見たうえで、結果的に柿木が準決勝と決勝は完投している。
各投手の登板間隔を1〜2戦目は中6日、2〜3戦目は中2日にすることで、プロ野球のようなイメージで先発をローテーション化していた。
余談だが、仙台育英が夏に制した2022年の大阪桐蔭は、2018年ほどのスケールはなかったものの、長いイニングを投げられる川原嗣貴・前田悠伍・別所孝亮の3投手で先発ローテーションを組んで運用。
その結果、夏の甲子園は優勝を逃したものの、明治神宮大会・センバツ・国体の三冠に輝いた。
時代によって活躍する投手の傾向は変わるが、あくまで高校野球では甲子園で勝てる投手という視点が必要になっていく。
スーパーエースという視点なら、プロ野球の世界でも活躍できる資質が必要になっていくが、今後も1人で勝ち上がれるスーパーエースはもちろんのこと、投手を中心としたさまざまな戦略に注目していきたい。