「ジャイアントキリング」ではなく「実力」

今年の夏の甲子園の予選は、ジャイアントキリングが多いと騒がれている。

2021年夏の甲子園覇者・智弁和歌山が敗れ、センバツ覇者の山梨学院や準優勝校の報徳学園も姿を消した。

その他、名門と呼ばれる高校が続々と敗れているが、これはジャイアントキリングではなく、勝ち上がった高校の実力が上回っただけと見ている。

『戦略で読む高校野球』(集英社新書)では、一定水準以上の実力が伴い、データや戦略を活かしても下馬評を覆すことはないと書かせていただいた。

そのため、徹底的に抑えることや、タイブレークに持ち越すにしろ、それを再現できる実力があってのことなのは明確だ。

智弁和歌山に勝利した高野山を見ると、年によっては初戦負けもあるが、2021年は和歌山県大会ベスト4まで勝ち進んでいる。

現在の和歌山県は、智弁和歌山をはじめ、市立和歌山や和歌山東といった高校が強豪と呼ばれているが、高野山も善戦する年があるため、今年は実力をつけたうえで、智弁和歌山戦の対策をしたのだろう。

センバツ覇者・山梨学院に関しては、センバツでエース・林謙吾に任せきりだったこともあり、春季大会は2番手投手の育成に務めた。

ただ、高校野球の投手は、昔からセンバツで投げすぎると、夏はなかなか調子が上がらないことがある。今回、林がそのような形になった。

その予兆として、春季大会では帝京戦でまさかの8失点を喫する。夏に向けて相対的に打力が上がるなかで、林自身はセンバツの疲れを取ることや2番手投手の育成などで、夏にピークを合わせられなかったことが要因だろう。

センバツ準優勝の報徳学園は神戸国際大附に敗れたが、そもそも神戸国際大附は報徳学園と対等なレベルで優勝候補だった。

秋季大会では近畿大会にまで出場し、初戦で大阪桐蔭に敗れ、センバツ出場を逃した。

抽選さえ変わっていればセンバツ出場の可能性もあった実力校のため、番狂わせではないことがわかる。

また、明徳義塾も準決勝で敗れたが、これも高知中央は決勝で高知に勝利し、甲子園出場を決めた。これは実力が無いわけでもなく、対等以上に戦えた結果と言えるだろう。

その他の強豪校を見ても、近年、帝京や常総学院はチーム状況に苦しんでいる。そのため、リクルーティングから同じエリアの強豪校に負けている部分は大きい。

中堅高校の台頭、そして強豪校がメディアで実力通りの扱いを受けていないことも大きいだろう。

果たして学生相手にPV数の欲しさだけで、ここまで度がすぎた報道をしていいのだろうか?

今大会のメディアの報道により、全国屈指の強豪と呼ばれる高校は、おそらく都道府県大会終盤から甲子園に勝ち進むにあたり、ヒール扱いされる可能性は高い。

また、甲子園が進むにあたってメディアが報じやすい高校が勝ち進めば、一気に甲子園全体もそのチームを味方にしていくだろう。

学生野球だからこその難しさはあるが、そのようなプレッシャーを跳ね除け、「真の王者」を創出する大会になってほしいと願っている。