「ChatGPT」って仕事に役立つの? と疑問に思っている人は多い。例えば、業務終了後に日報を書く必要がある会社の場合、ChatGPTを使って“ぱっとしない日報”を修正させたらどうなるのか。“AIの達人”であるKDDI総合研究所リサーチフェローの小林雅一氏が試してみました。

※本記事は、小林雅一:著『AIと共に働く -ChatGPT、生成AIは私たちの仕事をどう変えるか-』(ワニブックスPLUS新書:刊)より一部を抜粋編集したものです。

面倒な「日報」を前向きに修正させてみたら?

業務終了後に日報を書くのは、成果が出なかった日には面倒で気が重い作業です。

そして恐らく多くのビジネスパーソンの場合、そんなにしょっちゅう目立った成果が出るわけではないでしょう。

しかし、だからといって日報を書くのに手を抜いたり、やる気のないところを上司に見せれば、徐々に評価は下がっていくし、自分自身の気持ちも萎えていくでしょう。

日報のように日常的ながらも手を抜くことのできない作業にChatGPTがどう使えるか? ここでは中古車ディーラーの営業担当者を想定して、それを見てみましょう。

▲ChatGPTへの問いかけ
▲ChatGPTが書いてくれた日報

おそらく人によって大きく見方は異なると思います。

ChatGPTによって修正された日報は、確かに言葉使いが以前よりもポジティブになっています。

たとえば「3つの活動を行いました」→「重要な3つの活動を実施し、業務の基盤を強化しました」「(ウェブサイトの)情報更新」→「デジタルプレゼンスの強化」など。

ただ、実質的な内容が変わったかと言えば、決してそんなことはありません。言葉は悪いですが、本当は冴えない日報の内容を単に「粉飾」しただけとも言えそうです。

もうちょっとプロンプト(質問やリクエストなど)を工夫すれば、もう少し良い日報になるのではないか――そう思われる向きもあるかもしれませんが、恐らく大差はないでしょう。

なぜなら、日報でどう言い繕ったところで、悪い営業成績が良くなることは有り得ないからです。

上司によって判断は分かれるかも……

問題はこのような努力を上司がどう評価するかでしょう。これも人によって反応は異なると思います。

「日報の見た目を良くすることより、1件でも成約を増やすための実質的な取り組みに力を入れろ」と言う上司もいれば、逆に「今の成績は悪いけど、それでも不貞腐れることなく前に進もうとしているな」と評価してくれる上司もいるでしょう。

少なくとも「日報の表現を前向きにする」という行為自体がマイナスに作用することはないはずです。しかもChatGPTにそれを頼めば、たいして時間をかけずに楽にできますから、やらない手はないでしょう。

一方で、「日報を自分で書いてからChatGPTに修正させるよりも、最初からChatGPTに書いてもらったほうがいいのではないか」と思う方もおられるかもしれません。

しかし日報に記す内容、つまり今日の活動内容などは箇条書きにしてChatGPTに入力する必要があります。日報は基本的に箇条書きのようなスタイルですから、ChatGPTに必要情報を入力した段階で、実質的には自分で日報を書いたようなものです。

そうであるなら、最初は自分でちゃんと日報を書いて、それをChatGPTに修正させるほうが、それほど余計な手間をかけることなくベターな結果が得られるはずです。