ネット記事、書籍や雑誌の特集などで「ChatGPT」関連の話題が盛んです。いろいろなことが言われているけどよくわからない……。結局「わたしたちの仕事に役立つの?」と疑問に思っている人も多いでしょう。そこで、人工知能とそれを支えるクラウド技術の進化を長年追い続けてきた小林雅一氏が、メールの返信文章をChatGPTに考えてもらいました。

※本記事は、小林雅一:著『AIと共に働く -ChatGPT、生成AIは私たちの仕事をどう変えるか-』(ワニブックスPLUS新書:刊)より一部を抜粋編集したものです。

めんどくさいメールの返信をさせてみた

ChatGPTを使って基本的な作業をこなしてみましょう。それによって、ChatGPTのような生成AIが、日頃の業務で持つ意味がわかるはずです。

試してみたのは、先日の同窓会で久しぶりに再会した同級生から届いた営業メールへの対応です。

旧友に対して断りの返事を書くのは気の重い作業ですが、こうしたイヤな作業こそAIに肩代わりしてもらいたいものです。

さてChatGPTはうまく、この仕事ができるでしょうか?

▲ChatGPTへの問いかけ
▲ChatGPTが書いてくれた返信

率直に言って、ChatGPTが書いてくれた返信は「まあまあの出来」ではないでしょうか。丁寧な文面ですし、分量もこの程度が適切であると思われます。

もちろん完璧とは言えません。冒頭の段落の「本当に心から楽しかったです」という表現は、ちょっと不自然で大げさですし、次の段落の「その有用性と品質を疑う余地はありません」という評価は、田中さんからの営業メールにちょっと目を通した程度では下せないはずです。

さらに、末尾の「どうかお元気でお過ごしください」は、再会を期待するどころか、むしろ「今後二度と会いたくない」とでも言っているかのような印象を、相手に与えてしまうかもしれません。

しかし逆に見れば、それら数か所に筆者(ユーザー)が少しだけ手を入れれば、実際の返信メールとして使えそうです。

ChatGPTに入力するプロンプトを書いて、田中さんからの営業メールをコピペする作業に筆者が費やした時間は1分もかかりませんでした。あれこれ悩みながら長い時間をかけて断りのメールを書くよりは効率的です。

またマイクロソフトやグーグルなどが今後、「Outlook」や「Gmail」などのメール・ソフトに対話型AIの機能を組み込んできます。これらが実用化されれば、今回のChatGPTの場合のように相手からのメールをコピペする必要すらなくなります。

つまり、メールソフトの対話型AIに対して「相手の気持ちを損ねることなく、断りの返事を書いてくれ」とリクエストすれば、おそらく適切な文面をAIが考えて返事をしてくれるようになるでしょう。

この種の状況は、他にいくらでも考えられそうですが、対話型AIあるいは生成AIはこのように「(人間が)やりたくない作業を肩代わりする」という用途に対して非常に効果的と言えそうです。