オースティン・ウェルズ Austin Wells

お次は打撃型キャッチャーとして期待を集めるウェルズです。2020年のドラフト1巡目指名でヤンキース入団を果たしたアメリカ出身の24歳。怪我などでしばらくは評価を下げてしまっていましたが、直近では優れたアベレージ、パワー、選球眼を持つ左打者へと急成長中であり、深刻な左打者不足に陥っているヤンキースにとっては、昇格してほしかった最右翼な存在。

またヨギ・ベラ選手、ビル・ディッキー選手、サーモン・マンソン選手、ホルヘ・ポサダ選手……といった打撃型キャッチャーたちが、長きにわたり華やかな活躍を見せてきたヤンキースにとっては、パーフェクトフィットではないでしょうか。

ちなみに入団時から守備力、特に肩の弱さは課題としてあげられており、長らく他ポジションへのコンバートや併用説が唱えられてきた一方、3試合目にして盗塁刺を決めたり、ピッチャーの信頼を勝ち取ったり、その高いポテンシャルの兆しも見せたりしています。

7月に離脱し、全休が確定した正捕手のホセ・トリビーノ選手が来季には復帰予定なので、開幕では彼の控え捕手を務めつつ、プラチナグラブ受賞者の下で修業すれば飛躍の可能性もあるでしょう。そして好打撃を駆使すべく、キャッチャー以外でも外野やファーストでも起用されることが理想路線ではないでしょうか。

※毎年リーグでポジション問わず最も守備が優れている野手へ送られる賞。いわばゴールドグラブの最強版。

少し話が逸れますが、ウェルズ選手のバッティングIQが極めて高いことが露わになったエピソードが、昇格を果たす数ヶ月前から大々的に報道されました。それは現地6月12日のオフ日に、前述の新人ショート・ボルピ選手が実家のあるニュージャージー州(ヤンキースの本拠地のあるニューヨーク州の隣州)へ帰省をし、マイナーリーグ時代のチームメイトらを招きチキンパーム(アメリカで定番の料理)を共に食したとのことでした。

デビュー後に打撃不振に苦しんでいたボルピ選手にとって、単に気分転換として楽しみにしていたイベントでしたが、流れでボルピ選手のメジャーでの活躍映像を鑑賞することになりました。そのときにウェルズ選手が「(ボルピ選手の)打撃スタンスが無双をしていたマイナー時代と比べて若干開いている」ことを指摘しました。それを修正したボルピ選手は面白いほど打撃が飛躍します。

チキンパーム前(67試合)
打率 .186 出塁率 .260 長打率 .345 OPS .605
9HR 四球率 8.8% 三振率 30.8%

↓↓↓
チキンパーム後(68試合)
打率 .250 出塁率 .332 長打率 .473 OPS .805
11 HR 四球率 9.4% 三振率 23.6%

ウェルズ選手本人の打撃能力とは直接関係していない話にも関わらず、昇格前から打撃センスが騒がれ、メディア・ファンからの期待が大いに膨らみ上がった一件でした。まだデビューを果たして間もないが、すでに初ヒットを放っており、順調な滑り出しと言えるでしょう。

その打棒と口髭でヤンキースを救ってくれ!


プロフィール
KZilla(ケジラ)
ニューヨーク・ヤンキース、およびMLBの魅力をTwitter、note、ラジオなどで発信し続ける注目の野球アナリスト。ニューヨーク育ちの英語力を活かした情報収集力と分析力は、コアなファンからも高い評価を得ている。つい先日まではウェルズの肩を懸念していたが、見事な送球を見るや、手首がちぎれそうな勢いで手のひら返しを披露。本場ヤンカスの生き様を見せつけた。X(旧Twitter):@TokYorkYankees、note:KZilla|note