金融自由化や資金調達の多様化や長期にわたる低金利政策により、銀行の持つ従来のビジネスモデルは崩壊しました。時代の趨勢(すうせい)についていけなくなった地方銀行はどうなっていくのだろうか? お金の裏も表も知り尽くした経済評論家・渡邉哲也氏が、地方銀行について解説します。

※本記事は、渡邉哲也:著『世界と人間を操る お金の学校』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

三大メガバンク以外は時代についていけていない

銀行とは、個人から預金を集め、それを貸し出すことで金利差を稼ぐのが本来のビジネスです。預金金利と貸出金利の差が銀行の利益であり、それを運用することで利益を出してきました。しかし、金融自由化や資金調達の多様化、長期にわたる低金利により、そのビジネスモデルが壊れてきています。

かつて企業の資金調達のほとんどが銀行借り入れであり、銀行は企業の資金を融通することを主なビジネスとしていました。しかし、現在では、資金調達手段が多様化し、大企業などでは債券(社債)を発行するのが一般的になっています。

また、外国為替に関しても、金融ビッグバンにより自由化され、商社や大企業などでは直接為替業務を行う企業が多くなりました。このため、従来型の銀行ビジネスは成立しなくなってきているわけです。

そして、もう一つの大きな役割である送金と決済に関しても、クレジットカードの普及やスマホ決済などが増加し、銀行そのものが現金を取り扱う役割は低下しています。ただし、クレジットカードやキャッシュレス、スマホ決済なども多くを銀行子会社などが手掛けており、最終的には銀行口座から資金が引き出されます。

ここで問題となるのが、自己でクレジットカードや決済システムを持つメガバンク以外の銀行ということになります。かつて、日本には多くの都市銀行(県をまたいで営業できる)、地方銀行(県内のみで営業できる)、相互銀行(無尽を発祥とする現在の第二地銀)、信用金庫や信用組合(地域や職場単位で組合員のみが利用できる)がありました。

バブル崩壊以降、都市銀行は合従連衡(がっしょうれんこう)を重ね、現在は三大メガバンク(東京三菱UFJ、三井住友、みずほ)となり、それに追従する形で、りそなが存在します。

そして、地方銀行は相互銀行が廃止され、第二地銀となり、地方銀行という一つのくくりでグループ分けされるとともに、県をまたいではいけないという規制も撤廃されました。

そして、現在、大規模な再編が起きています。地方銀行の多くは、独自の決済システム(クレジットカードやキャッシュレス決済)を持っておらず、メガバンクやバンクカード(地方銀行が共同でつくったクレジット会社、現在は一部の銀行のみが採用)に業務を依頼している構造です。

このため決済における収益性が低いのです。また、ネット決済などに関しても、多額の投資が必要になるため、遅れていたり投資できないのが現状であり、時代についていけなくなっています。これは信用金庫や信用組合にもいえることです。 

▲三大メガバンク以外は時代についていけていない イメージ:giri / PIXTA

ただし、信用金庫や信用組合の多くは地域密着型の金融サービスを提供している側面があり、なくせない側面もあります。このため、金融庁などは「水平合併」(地方銀行と他の地方銀行の合併)や「垂直合併」(地方銀行と地域信用金庫などとの合併)を推し進めており、規模のメリットによる合理化に向けて動いています。

都市銀行の問題は「大都市には支店がたくさんあるが、地方には少ない」点であり、いまだ銀行窓口の必要性があるため、地方の金融機関の必要性はあるのです。

地方銀行の商品の手数料が高い理由

稼ぐ手段を失いつつある地方銀行は、手数料ビジネスを拡大していきました。自由化され販売できるようになったファンドや債券や保険の販売です。

しかし、ほとんどの地方銀行では、自ら債券ディーリングをできる人材も部署もありません。また、複雑化している債券やファンドの組成などできません。地方銀行では、証券会社や他社がつくった商品を販売しているだけにすぎません。この時点で顧客は二重に手数料を払っていることになります。

また、商品を説明できる銀行員もほとんどいないのが実態です。問題になったのが地方銀行による「仕組債」販売問題で、リスクが高く知識が必要な商品を商品知識のない行員がリスク説明をせず、一般の顧客に売っていたというものです。

なぜ、地方銀行がそのようなハイリスク商品に手を出すかといえば、手数料が高いからであり、銀行にとって非常においしい商品であるからです。特に外貨建ての商品などでは、商品の販売手数料だけでなく、為替の手数料も往復で得られることになります。

また、それは顧客にとって魅力的に見える商品でなくてはいけません。そのため「表面金利が高く、手数料が大きい」つまり、非常にリスクの高い商品を販売していたわけです。

▲地方銀行の商品の手数料が高い理由 イメージ:kou / PIXTA