馬淵JAPANの野球を参考にする高校は増える?

今大会の馬淵JAPANの野球は、低反発バット導入後の野球に対し、参考にする監督は増えるのではないだろうか。

実際のところ、成熟されていない高校野球なら、転がせば何かが起きるのは事実である。

そのため、今年まで導入されているバットでも、打者としての能力によっては低いライナーやゴロを意識させることもひとつの戦略になっていた。

今後、打力があるチームなら、2004年の駒大苫小牧や2022年の仙台育英のように、派手な一発はなくても、強くて低いライナーを打てる選手を並べることが最適になると言ってもいい。

しかし、世代別で選手個人の能力やチームビルディングが変わる高校野球では、毎年そのチームを作れるとは言い難い。

このU-18の馬淵JAPANでは、最短距離で結果を残せることを証明したが、それを参考にする高校は急増するだろう。

この戦略の精度を高めれば、ある程度の上位進出は毎年安定して見込めるのではないだろうか。

実際のところ、21世紀の夏の甲子園の優勝校で、2001年の日大三から2023年の慶應を振り返っても、犠打数が一桁の高校は2012年の大阪桐蔭と2016年の作新学院のみである。

さらに、失策も少ない高校が優勝していることから、ミスをしない野球ができるかも重要になっていくだろう。

下記が21世紀の夏の甲子園優勝校の犠打と失策のデータだ。

2001年:日大三・犠打20・失策4
2002年:明徳義塾・犠打24・失策4
2003年:常総学院・犠打17・失策2
2004年:駒大苫小牧・犠打23・失策1
2005年:駒大苫小牧・犠打20・失策2
2006年:早稲田実業・犠打25・失策7
2007年:佐賀北・犠打27・失策4
2008年:大阪桐蔭・犠打19・失策2
2009年:中京大中京・犠打21・失策5
2010年:興南・犠打20・失策4
2011年:日大三・犠打21・失策2
2012年:大阪桐蔭・犠打8・失策6
2013年:前橋育英・犠打14・失策7
2014年:大阪桐蔭・犠打11・失策5
2015年:東海大相模・犠打13・失策5
2016年:作新学院・犠打3・失策2
2017年:花咲徳栄・犠打27・失策4
2018年:大阪桐蔭・犠打11・失策4
2019年:履正社・犠打14・失策1
2021年:智弁和歌山・犠打18・失策2
2022年:仙台育英・犠打14・失策3
2023年:慶應・犠打13・失策6

低反発バットが導入される前から、犠打と失策の重要さが数字にも表れている。

低反発バット導入後は、さらにこの部分が重要になっていき、犠打の数は増えていくだろう。

この傾向の仮説に関しては、『戦略で読む高校野球』(集英社)には下記のように記載している。(以下、一部抜粋)

高校野球は、2024年からは「低反発バット」に完全移行する。この低反発バットによって、予想されるのは今よりも打力が下がることだ。高校野球の場合は、これまで金属バットの恩恵があった部分は大きい。また、投手に関しては昔よりも球速が高速化しており、「投高打低」の傾向が強くなると予想されている。

低反発バットの導入により、投手の配球や打撃戦術も変わってくるだろう。まず外角のボールを長打にしにくくなるため、投手の外角攻めはさらに増える可能性は高い。高校野球の場合は、外角のストライクゾーンが広めに取られることもあるため、外角に投げることはメリットしかない。

長打が出にくくなることに伴い、現在よりもスモールベースボールを掲げるチームが増えると見ている。また、打撃型のチームでも2022年夏に準決勝までホームランなしで勝ち進んだ仙台育英のように、短打でつなぐ戦略を取るようになるだろう。逆に言えば、長打力を持ち味とするチームは今後苦戦を強いられることになるだろう(プロ野球で統一球が導入された2011年から2012年がそうだった)。

ただ、この低反発バットの導入も選手の成長の妨げになる恐れもある。韓国の高校野球は木製バットを2005年から導入したが、現在、韓国球界では若手選手の打力が下降していると言われ、問題になりつつある。日本の高校野球も、スモールベースボールに偏りすぎてしまい、2000年代中盤の愛工大名電や2010年代中盤までの健大高崎のようにベースとなる打撃力がままならない選手が増えてしまうのではないだろうか。

このことを踏まえると、今よりも打者が育ちづらい環境になるため、スモールベースボールを提唱する高校が増加し、選手個人の打力が低下すると見られる。

そのため、5年から10年後のプロ野球やフル代表の打者の成長にも影響が出ていくだろう。