母校の戦いぶりに胸を打たれる

僕の母校は都立豊島高校という学校で、決してサッカーが強い高校ではありません。

よく対戦相手の監督から

「豊島の子はひたむきだね」

と言われていたのが、褒められているわけではないと気づいたのは、引退してからでした。

真面目なので地区大会レベルでは勝ちますが、ベスト32やベスト16でシード校とあたれば必ず負ける。相手がイヤがることをするより、ひたむきにまっすぐ自分たちの力をぶつけようとする僕らは、おそらく強豪からすればいいカモだったと思います。

僕の卒業後に先生が変わり、コーチも増えたみたいですが、悪しき伝統なのか僕らの代以降も公式戦で一度も強豪に番狂せは起こせていません。

僕はその結果を見るたびに「真面目でひたむきにやってるからだよ」と、少し冷めた目で見ていました。

大学でも部活でサッカーを続けて、技術以上に戦術や駆け引きを学んだので、高校時代のチームメートとボールを蹴ると

「俺、このレベルのチームで補欠だったのかよ」

と、少しがっかりしたり、嫉妬のような、逆恨みのような感情が今も僕の中には渦巻いているのです。

それでも今年はコロナも明けたので、逆恨みの奥にギリギリ愛着がある母校の試合を見に行こうと思っていました。ただ、仕事と重なってしまい行けないうちに母校のサッカー部のSNSに「敗退した」との投稿がアップされました。

その下には、学校内でインフルエンザが流行してしまい、部員の半数以上が参加できなかったと書いてありました。ベンチ入りは本来20人が入れるところに17人だけ。これが公式戦初出場の選手も多かったそうです。

そうか、それは悔いが残るよな。出た選手も出られなかった選手も。

そして、見に行かなくてよかったな。たぶん行っていたら、その情報を聞いた時点で人数分のウィダーインゼリーを買いに走って

「気休めかもしれないけど、ハーフタイムに飲んだらラスト10分に効いてくるから! 一歩が勝敗を分けるからな!!」

とか試合前に熱く声をかけていたに違いありません。知らないOBのそれはキツすぎます。

さらにSNSを下にスクロールすると、試合の詳細が書いてありました。トーナメント決勝戦だったこの試合、2点を先制されたチームは、そこから追いつき、延長戦へ持ち込んだとのこと。

マジで行かなくてよかった。

そんな試合を見ていたら、絶対に周りの父兄さんを扇動してチャント歌ってた……。知らないOBのそれは選手の熱を冷ましかねません。というか出禁かも。