舞台を中心に活動している芸歴14年目の漫才師・トットが、7月から9月にかけて『3か月連続事務所交流漫才ライブ』を開催している。このイベントは、『M-1グランプリ』のラストイヤーまで2年と迫っている彼らが、今まで以上に漫才へ取り組むための強化ライブだ。

さらに、自ら発信することが苦手だったという二人がstand.fm『トットのコゼリアイラジオ』の配信、公式Xの立ち上げと更新、YouTubeでラジオの切り抜き動画配信と、精力的に新しい取り組みをスタートさせている。そこには“変わりたい”“周りの期待に応えたい”という熱い思いがあった。

※本記事は『+act.(プラスアクト)2023年10月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

主催ライブを例年以上に行う理由

――今年は例年以上に主催ライブを開催されていますね。

多田智佑(以下、多田) 1月から6月まで新ネタライブをやるというのは一昨年、昨年もそうだったんですけど、3か月連続での交流漫才ライブは今年からですね。

桑原雅人(以下、桑原) 完全に仕上がってます。

多田 すごいな、おまえ。自分で言うことじゃないよ?

桑原 (笑)。完成したものを、いろんな人に見てもらうにはどうしたらいいんだろうと考えて、新しい動きをやっていこうということになりました。

多田 仕上がったっていうのは個人の判断なのでわからないですけど(笑)、今年で東京に出てきて4年目。今までいろんなことをやらせてもらったんですよ。

桑原 めっちゃいろんな舞台に出させていただいてて。大阪は吉本の芸人99パーセントくらいが吉本の劇場に出てますし、そこに『M-1』が好きなお客さんも見に来てくださるから大丈夫なんです。ただ、東京に来て思ったのは吉本以外を好きな方もたくさんいるなって。特に『M-1』で頑張りたいという思いがあるなかで、『M-1』ファンの人にどうすれば僕らの漫才を届けられるんだろうというところから、他事務所の人とライブをやったり、外の小屋に出て行ったりしたい、ということになったんです。

――2年連続で新ネタライブをやってはきたものの、外に届いていないと感じたと。

桑原 そうですね。それに、二人とも全然発信してなくて。僕は苦手ですし、多田さんは爽やかな見た目なんですけど、“芸人は何も言わんとやるべきことをやっとけばいいんじゃない”っていうクラシックなタイプの人で。

多田 だいぶ乱暴な言い方やなぁ。

桑原 (笑)。二人とも面白い漫才をしていれば、いろんな人に見てもらえると思ってたんです。けど、今の時代はそうじゃないので、自分たちから発信することにしたんです。いざ始めてみると、吉本のなかでも「トットって、そんなに『M-1』へ力を入れてたんだ」って驚く人がいっぱいいて。近くにいる人が驚くってことは何も伝わっていないっていうことで、ほんまによくなかったんやなという話になりました。……けど、イヤやってんな?

多田 今っていろんな売れ方があるのに、僕らはこの世界に入った当時の感覚のままやってきてしまったというか。この世界にいて、しかも漫才をやってて『M-1』を意識しない芸人がいないわけがない。そんな当たり前なことをわざわざ言う必要はないと思ってたんです。

桑原 見た目とか雰囲気と違うんですよ、多田さんって。気さくなんですけど、中身が頑固な職人。いいものを作ればいいやろっていう人なんですけど、何が怖いって、この人はネタを書いてないんです。

――ネタを書く人が職人気質なのはわかりますけど、そうではないんですね?

桑原 そうなんです。意味わからないでしょ?

多田 やめろやめろ!(笑) ネタ作りの場にはもちろんいます。僕は案が出るまで黙ってずっと待ってるだけです。