2023W杯フランス大会の1次リーグD組を2勝2敗の3位に終え、2大会連続の決勝トーナメント進出を逃したラグビー日本代表が10月11日に帰国した。
選手たちの帰国を待ちわびる約300人ファンが空港へと詰めかけ、選手たちを出迎える様子を目にした姫野主将は「ワールドカップから帰ってきたときに、空港に誰もいなかったという話を(先輩たちから)聞いていたので、(ラグビー界の)努力が結ばれているように感じる」と印象を会見で語った。
姫野「もっと日本代表を強くしたい」
帰国後の会見では、ジェイミー・ジョセフHC、主将の姫野和樹選手(トヨタ)、副主将の流大(サントリー)選手らが、フランス大会の総括や今後の日本ラグビーの展望などを語った。
ラグビー日本代表を率いたジェイミー・ジョセフHCは「とても残念な結果に終わりましたが、さまざまな犠牲を払いながらも全ての力を出し切ってくれた選手たちのことを誇りに思いますし、彼らに感謝したい。日本代表のコーチとして関われたことを本当にうれしく思っています」と、7年に及ぶ日本代表でのキャリアを総括。
「本当にラグビーが大好きなので、今後また日本に戻ってくることができたら」と、過去にはサニックスや日本代表でもプレーした第二の母国への思いや、今後に向けた抱負を語った。
続けて主将の姫野和樹選手と副主将の流大選手が、今大会を終えた感想や、今後のキャリアについての質問に答えた。
主将としてチームを率いた姫野選手は「今回のW杯では結果を残すことができず、本当に悔しい思いをしましたし、主将として懸命にチームを導いていきましたが、力不足を感じる大会でした。ただ、ジェイミーとともにやってきたこの7年間は、僕にとっても、日本ラグビーにとっても貴重な時間だったと思います。もっと日本代表を強くしたいという思いが強くなった」と、ここまでの歩みを振り返った。
副主将を務め、今大会で代表引退を表明している流大選手は「結果的には2勝2敗に終わりましたし、怪我で途中から出られなかったので、悔いの残る大会だったと思います」とキャリアの集大成となる2度目のW杯を振り返った。
そのうえで「日本代表を引退するという気持ちに変わりはありません。幼い頃からこのW杯に出るために努力を続けてきて、これまで36試合に出場させてもらいました。僕はこれまでに、日本代表という場所のツラさや勝つ喜びを感じてきたので、これからは日本代表の1ファンとして、さまざまなサポートを続けていきたいなと思っています」と、日本ラグビー界のさらなる発展に期待を寄せた。
流選手の決意を聞いた姫野選手は「めちゃめちゃ寂しいです」と、大学時代の先輩の引退を惜しみつつも、「僕は大学時代から流選手の良いところや悪いところ、プライベートも知っている。尊敬していますし、彼がいたから頑張れるところもあった」と言及。
それに対して流選手は「今大会で誇りあるキャプテン務めてくれて感謝しています」と、後輩である姫野選手への思いを口にした。
4年後のオーストラリアW杯で、日本代表がさらなる高みを目指すには、どうすればいいのか。会見では日本ラグビー界の課題や今後の展望についても言及された。
日本ラグビーフットボール協会会長の土田雅人氏は、フランスW杯における日本代表の戦いぶりを「非常に素晴らしい監督のもとでチームは成長してきました。世界のトップ4に入れる力はある」と一定の評価を示しつつも、「今フランス大会に関しては、コロナ禍の影響で6ネイションズマッチをはじめとするテストマッチができなかったことが、結果として大きなマイナスになってしまった」と原因を分析。
「世界各国のレベルが向上し、国をあげて強化に力を入れる国も増えるなかで、どうすべきなのか考えていく必要がある」と、将来に向けた意欲を覗かせた。
続けて、ジョセフHCは「大学や企業スポーツとしてのシステムもあるなかで、4年かけて世界で戦える代表チームを作り上げていかないといけない。(W杯で)トップ8以上に進むためには、しっかりと戦うための準備をしなければなりませんが、残念ながら現在はまだできていない。
『どうすべきか?』という答えはまだ出ていませんが、海外でプレーしている姫野や松島(幸太朗)のようなワールドクラスの選手をたくさん輩出したり、そういった選手たちが後進を育てるプログラムを作っていくことが必要になるのではないかと思っています」と、日本ラグビー界の課題や今後の強化方針について一石を投じた。
今大会の熱狂や敗退の反省を、今後のラグビー界の発展にどのように活かしていくのか。4年後に向けた歩みはもう始まっている。
(取材:白鳥純一)