“ネオ渋谷系漫才”と呼ばれるチャラ男口調で掛け合う漫才で人気となったEXIT。現在もメディアに引っ張りだこの彼らが、コンビ結成5周年として全47都道府県を巡る全国ツアー『47° M ~2023年中に達成する持続可能な47のファンミ兼チャLIVE~』。また、そのツアー千秋楽の翌日には、東京ガーデンシアターで『チャランの園 1億年と2千年たっても笑わせる ~カネチ&リンと林檎かじり散らかしてアチャーな新人類創生計画ブッカマ!!~』を開催する。

音楽活動やアパレルなど、お笑いライブの枠組みにとらわれない単独ライブを開催してきた彼ら。このライブでは、どんな新しい彼らに出会えるのだろうか。

※本記事は『+act.(プラスアクト)2023年11月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

全国ツアーで兼近に起こったハプニング

――12月まで続く47都道府県を巡る全国ツアーを、今年やろうと思われたのは?

兼近大樹(以下、兼近) 本業だから、ですかね。テレビにも出させていただいていますけど、本来なら舞台でネタをやることが仕事なので、普通のことをやってるだけって感じです。もともと、やりたいなという気持ちもありましたし。

りんたろー。 普段は僕が楽しいことをやらせてもらってるんで、兼近くんも楽しいことをやろうよって感じですかね。実際、ライブは僕も楽しいですし。こんなに多くのネタをやるのも久しぶりなので、目の前にお客さんがいることがまずありがたいというか。

兼近 いつもはロケバスとかで収録のある場所まで連れて行ってもらうんですけど、全国ツアーは自分たちで現地まで向かうんで、ハプニングもいろいろとあります。1回、作家さんと2人で全然違うホールに入ったことがあって。吹奏楽のオーケストラがやってて、皆さんが一生懸命リハをしてるところまで入っちゃいました(笑)。

りんたろー。 あはは! そうなの?

兼近 ホールの方に「どうしたんですか?」って声掛けられて。「いやぁ、音が聴こえたんで入ってきちゃいました」ってごまかしましたけど。

りんたろー。 (ライブをやるという)情報が各地に行き渡ってないみたいで。僕らが歩いてると、集まってきた人に「なんでここにいるんですか」って聞かれたり、兼近くんを見て泣く人とかいたりするんですけど、ライブをやることは知らないみたいで。その場で手売りするとめっちゃ盛り上がるんです。

兼近 30枚くらい売れたこともあるし、手売りも自分たちでやってますね。

りんたろー。 僕のSNSに“私たちの県には来てくれないんですか?”って送られてきたりもするんですけど、もう行ったんだけどなって。情報を行き届かせる難しさも感じてます。だから、やってみて思ったのは、興行として成立させられる芸人はかなり限られてるんだなということ。僕らみたいなマスに向けてやってる芸人すらこうなんだから、ほかの芸人さんはもっとしんどいんだろうなと思いました。

――お客さんの反応も地域によって違いを感じますか?

兼近 恥ずかしがり屋の人たちばかりのところもありますけど、結局、大事なのは空気感なのかなって。周りが盛り上がってたら追随して盛り上がるでしょうし、おとなしいなと思ったらおとなしくなる。そういう感じはあります。あと、その地域に寄せたボケを言うと盛り上がります。イジってほしいのか、舞台から聞いてみると、うちの地域はこんなことがありますって教えてくれるし、ちょっとイジると盛り上がってくれるというか……。

りんたろー。 それ、思った! 何時間に数本しかバスが来ないとか言うと、めっちゃ喜んでくれるよね?

兼近 ここまでどうやって来るんだよ! とかね。

――近くて便利であるはずのコンビニが、遠くてコンビニの意味を成してないとか。話題にしてもらえる機会がないから共感してくれるのがうれしいんでしょうね。観客とコミュニケーションを取りながらやってるということは、がっつりとしたネタライブなんですね。

りんたろー。 漫才とコントを5~6本。新ネタをバンバン入れながらやってます。以前『萎えぽよエリアぶちアゲ活性化ツアー』っていうのをやったとき、本当は(賞レースに向けて)ネタを叩きたかったんですけど、お笑いを見ることに慣れてないお客さんが多くて、やりたいネタをやるとお客さんに喜んでもらえないなと思ったので、結局は営業でやるネタで回ったんです。それに比べると、今回は叩くようなネタもやらせてもらっています。

漫才のイメージが強いけど「コントは楽しい!」

――ツアー最終日の翌日、更に東京ガーデンシアターでライブを開催されるんですよね。

りんたろー。 なんてドMなって感じですよね。

兼近 すごいスケジュールですよね。このライブはコントのかたちにしようかと。

りんたろー。 会場が広いと、間とかが取りにくいので漫才に向いてなかったりするんですよ。だったらコントにしようかなということです。

兼近 今までにないくらい派手なコントライブにしたいなと。サブタイトルのカネチとリンって入っているところにアダムとイブを当てはめてもらって、面白くなれる実を食べた二人の物語として見てもらえたら。もしかしたら二人をそそのかす蛇のようなゲストが現れるかもしれないですし、いろいろと(構成を含めて)考えてるところです。

――漫才のイメージが強いですが、最近はコントもやられているんですか?

兼近 あんまりやってなかったんですけど、全国ツアーをやるようになってから、ちょいかじりさせてもらってます。

りんたろー。 コントは煩わしい部分がなくなるんですよ。

兼近 いろいろと設定とかできますから。僕らっていろんなところで見られているぶん、どこかにマッチしたネタを考えなきゃいけないところがあるんです。けど、コントはそういうことを意識しなくていいので、なんでもできちゃうっていうか。

りんたろー。 そこがいいですね。ただ、設定とか音、光……いろいろと使える手段があるぶん、広がり過ぎちゃうので、さすがに他の人たちと戦うのは難しいのかなとは思います。あと、漫才のように直殴りできないという意味では、コントはコントで難しいところもあるんだなと感じつつやってます。けど、楽しいですよ。

兼近 めちゃくちゃ楽しい。一時期、全国ツアーもコントのほうが多かったこともあって。それは『キングオブコント』があったからなんですけど、予想外に負けてしまって。

りんたろー。 予想外だったの? すごいな。

兼近 決勝に行くだろうと思いながらやってたんですけど(笑)、予想に反して負けてしまってからは切り替えて、今は漫才多めにやってます。

りんたろー。 ただ、さっきも兼近くんが言ったように、EXITというものが多様化してしまったぶん、漫才は難しくもあるというか。いろんなところに顔を出させていただくのは、すごくありがたいことなんですけど、見たものによってEXITの持つ印象がそれぞれ違うので、ウケ方がバラバラというか、見てもらう視点を統一できないことに気づいて。

だったら、どうしようかって考えたなかで、出てきたひとつがコントだったんです。コントだったら僕らのことをどういう視点で見てたとしても、物語の世界観のなかで見てもらえるので、視点を揃えられるんですよね。

兼近 漫才はどうしても他者の視点に振り回されるところが……。ってまぁ、お笑いって、そういうもんですよね。誰かが面白いと思うことをしないといけないし、自分が面白いと思うことだけをやって、お金を払ってくれる人がいるかって考えると難しいから、自分が面白いと思うことをポピュラーにしていかないといけないでしょうし。

りんたろー。 ポピュラーだけを追い求めるならいいんですけど、そこに賞レースが乗っかってくるとややこしくなりますし。

EXITさんへのインタビュー記事は、発売中の『+act. (プラスアクト) 2023年11月号』に全文掲載されています。