宿泊先で「絵を描かせてもらえませんか?」

――移動に使ったバイクは現地で購入したんですよね。

1/35少年 そうです。バイクに詳しいわけではないので、現地のバイク屋さんに行って相談して、丸投げで選んでもらって買いました。

▲旅の良き友?となったバイク

――海外で、初めて行った場所でバイクに乗るって怖くなかったですか?

1/35少年 私、公共交通機関が苦手で。電車とかバスとか調べるのが苦手なんですよ。そういうのを使うよりかはバイクがいいかな、と。自由度も高いですし。あと、日本でも原付で旅をしてたから、原付旅のほうが勝手がわかってるというのもありました。

――壁画を描く場所はどう探していったんですか?

1/35少年 基本的には宿泊した場所で交渉してました。ゲストハウスとかで「絵を描かせてもらえませんか?」って聞くと、だいたい描かせてもらえましたね。もちろん、事前に写真とかを見て調べて、描かせてもらえそうなところを選んで行ってはいました。トルコって、みんなで集まってお茶を飲む習慣があるので、街中で見つけたらそこに入って情報収集したり。

それから、イズミルっていう街があるんですけど、そこでは壁画のイベントをやっていて。街中に壁画がたくさんあるところなんですよ。そういう街なら描かせてもらえるだろうなと思って行ったりしていました。オイル交換とか修理に立ち寄ったバイク屋の壁に描かせてもらったこともありましたね。

――言葉はどうしてたんでしょうか?

1/35少年 全然わからないので、だいたいはGoogleの翻訳アプリに頼ってましたが、なんとかなりました(笑)。

――描くモノや絵のテイストなどはリクエストをもらったりしたんですか?

1/35少年 お店のロゴとかは描かせてもらいますが、自分の絵柄で描かせてほしいって交渉してました。iPadで壁の写真を撮って、自分の絵と合わせて「こんなのどうですか?」って見せて、OKもらえたら描くって感じでやってました。

――壁に描かれた絵を見ると、かなり時間がかかりそうだなって思うんですけど。

1/35少年 大きくても幅5~6m×高さ2~3mくらいですよ。描くスピードもだんだん早くなって、最後のほうは2~3日で描いてましたね。

――画材はどのように調達してたんですか?

1/35少年 現地調達ですね。室内ならアクリル系の絵具、屋外の場合はシリコン系の塗料を現地で買ってました。日本より塗料は安かったですね。DIYが浸透してて使う人が多いんだと思います。ホームセンターはあまりないんですが、大きめの街だと金物屋みたいな個人商店がたくさんあって、そこにペンキが売ってるので調達してました。

▲トルコの商店
▲描いてきた思い出(ペンキ)が残る一張羅のオーバーオール

旅で起きたトラブルや印象的な出会い

――旅の途中にトラブルはなかったですか?

1/35少年 バイクを買ったときに、お店の人がご厚意でちょっとイジってくれたんですけど、その改造が不完全だったみたいで、ずっと原付の調子が悪かったことです。それが途中で旅をやめた理由の一つですね。変な改造はしてもらうもんじゃないなと思いました(笑)。

――思い出に残っている出来事はありますか?

1/35少年 シワスっていう街にいたときに、ちょうどトルコの大統領選があって。カフェに絵を描かせてもらいながら大統領選の行方を見てたのが印象に残ってます。あれはちょっとドキドキしましたね。

あとは、ジョージアでお世話になったホテルで3か所に絵を描かせてもらったことですね。そのホテルを運営してる人が、タトゥーアーティストだったんです。その方から「好きな絵を描いてくれよ」って言われて、自由に描かせてもらいました。さらに、ペンキ代も全部出すし、宿泊もいつまででもいいし、冷蔵庫にあるものも好きに食べていいって言われたんです。そこに1か月半くらい滞在しました。

ジョージアのトビリシに淺井裕介さんが廃墟に描いた絵があるというので、そこを目指して行ってたんですが、行ってみたら廃墟自体が取り壊されちゃってて見れなかったんです。でも、街を巡っていたら淺井さんが書かれた別の絵を見つけました。そんなことも印象的でしたね。

――すごい! 海外旅ならでは…って感じがします。

1/35少年 そういえば、モンゴルで小学生と描いたのは楽しかったですね。モンゴルのビザを取るときに、現地の人と連絡を取り合ってたんです。その現地の人の紹介で小学校に行かせてもらって、子どもたちと一緒に絵を描かせてもらいました。

▲モンゴルの小学校での壁画

――子どもたちはどんな反応でしたか?

1/35少年 めちゃくちゃにぎやかでした。モンゴルってゲルで生活してる方が多くて、学校の数もあまり多くないので、小学生が寮生活してるんですよ。私も寮に泊めてもらって1週間くらい生活したんですけど、子どもたちがとにかく元気で、部屋まで来てみんなで歌ったりとかして。絵を描いてるときも、授業が終わった子どもたちが周りに集まってくれて。日本から持ってきた絵の具とかは、そこで全部奪われました(笑)。「これもらっていい?」って言うから“まあ、いいか”と思って。