ポケットビスケッツのモノマネで生まれたキャラ
――世間知らズさんはSNSでも大人気ですよね。
椎木 認知度を上げるためにSNSをやろうかなと思って、当時、周りの芸人が誰もTikTokをやっていない時期に、ネタ動画を上げたらバーンとハネて、その流れで始めました。基本的には、彼女に僕が考えたものをやってもらって、僕が全部編集して上げる……という形です。さおりさんに負担がかからないようにしました。
――「マネージャーあじ美」は、どうやってできたんですか?
さおり 「神保町よしもと漫才劇場」のライブで、ポケットビスケッツのモノマネをしたとき、誇張をしすぎて、あのメイクで千秋さんをやっちゃったんです。
――(笑)。
さおり 周りの芸人の反応がめっちゃ良かったんで、「これで1個キャラを作ろうか」で、マネージャーになりました。
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――皆さんSNSをやっていますが、そのなかで個性を出すためにやっていることは?
椎木 最近は、さおりさん中心のものを上げています。さおりさんは女性お笑いファンにも嫌われるタイプではないですし、いい意味でキャラクター性があって、一般女性にも好かれやすいと思うんです。とにかく彼女のニンやキャラを知ってもらいたいなって。
さおり あとは「なしなし」ですかね。たぶんSNSでバズってる人って「あるある」が多いと思うんですけど、私たちは「なしなし」。「こんなヤツいねえだろ!」みたいなほうをやっていますね。
椎木 僕ら戦略も何もなくて、たまたま上げたのが、たまたまバズったり伸びたりしているだけなんで、本当にバズるコツとかも掴んでないんですよ。
――どの動画が人気ですか?
椎木 「あじ美」は地方に行っても声をかけられますし、僕も好きですね。山梨でやっているラジオでは、「あじ美」のコーナーもあります。
――逆に、思ったより反響がなかったな……という動画はありますか?
さおり めちゃくちゃありますよ。二人でツボに入りながら撮った動画とか、笑いすぎて何回も撮り直すヤツは伸びないですね。あと、シリーズ系は伸びる傾向があるんですけど、なぜか「ナンパシリーズ」だけは伸びないです。
『M-1』敗退して初めて真剣に話し合った
――2016年からコンビを組んで、これまでにあったターニングポイントを教えてください。
さおり 少しずつ私がピンのお仕事をもらえるようになったとき、すごく嫉妬してきたんですよ。電話で「なんで俺は出られないんだ!」とか、ずっと言ってきたんで、そこで私がブチギレて、怒りすぎて泣いちゃうみたいな。それをキッカケに、私を立ててくれるようになりました。
――椎木さんとしては、当時、どんな気持ちだったんですか?
椎木 僕が引っ張っていく感じのコンビ結成だったんで……。やっぱり、さおりさんメインになるかと思いつつも、なんか納得できないところもあって。“仕方ないけど、我は出したい”という時期にちゃんと怒られました。じゃあ、こっち(さおり)を持ち上げて、ちゃんと売れさせてから僕はついていけばいいんだな、と気持ちをシフトチェンジしました。ちゃんと正論を言ってきたんで、言い返しようがなかったです。
――(笑)。そんな椎木さんのターニングポイントは?
椎木 2023年のM-1を3回戦で落ちたことですね。今まで僕たちは運が良くてここまで来られたし、死に物狂いで努力したことがなかったんですよ。単独ライブや主催ライブをやって、自分らなりのペースで努力をしてきたつもりなんですけど、2023年は完全にあぐらかいて、こういう結果になった。落ちたあと、初めて二人で真剣に話し合いました。仲は良いですけど、今まで仕事について真剣に話したことはなかったんです。
――どんなことを話したんですか?
椎木 何かに全身全霊かけて取り組んだことって今までなかったし、「楽しくやれればいい」をコンセプトでやってきたんで、「2024年はネタに特化した1年にしよう」という話になりました。(さおりは)真面目な話が苦手で、いつもボケ返されたりしていたんですけど、僕が思いを伝えたときに、ちゃんとした答えが返ってきて……。
彼女の悔しい思いも聞けたので、じゃあ、その悔しさを晴らすためには、ネタをやろうと。「2023年はSNSを頑張る」という目標は達成できたので、2024年は「ネタで評価されたい」でまとまりました。
さおり 3回戦のネタは直前まで2本で迷っていたんです。私は、みんな入り組んだネタをもってくるだろうから、私がただゴリラのモノマネをするパワー系のネタをやろうって、ゴリ押ししたんですよ。椎木は2回戦でもやった、しゃべくりのネタをやりたかったんですけど、私が押し切ってやったら……全然ウケなくて。3回戦スベリすぎて「1回戦落ちだ」って言われました。
――(笑)。
さおり さすがに私も食らいました。自分のせいでもあるし、あそこで迷っていた別のネタをしていたらウケてたなって。でも、周りのM-1戦士みたいに、そこまでお互い悔しがる立場でもないよね、そこまで力入れてなかったね、みたいな話をしました。