究極の質問「結婚はしたほうがいいの?」

「おひとりさまになりたくない」という理由から、婚活をする現役世代は多い。実際のところ、おひとりさまに関する問題を回避するための策として、結婚は有効なのだろうか。

「結婚してもパートナーが亡くなったり認知症になったりすれば、おひとりさまです。子どもがいても遠方に住んでいたり不仲だったりすれば、それはそれでおひとりさまです。

結婚することはメンタルヘルス的には良いと思いますが、“結婚すれば老後は安心!”と思ってはいけません。いつかは誰もがおひとりさまなのです。それこそ先述した任意後見契約制度など、老後に備えた情報収集をすることが未婚既婚に関係なく重要です」

▲就職氷河期の人たちも今から備えておくべきですよ

また、最近は「結婚せずに老後は友達とシェアハウスに住みたい」という若者の声を見聞きするが、太田垣さんも悪くない考えだという。

「代表的なのが石川県金沢市でやっている“Share金沢(シェア金沢)”。Share金沢はサービス付き高齢者賃貸住宅、温浴施設、児童福祉施設、学童保育など、さまざまな福祉施設が同じ敷地内に並んでいます。そのなかで高齢者や障害者、児童といった多様な人たちが一緒に暮らしている、いわば地域レベルでのシェアハウスとなっているのです。

また、共有スペースがありながらも各部屋にトイレや浴室などが完備された、独立度が高い“コレクティブハウス”も最近は人気です。シェアハウスのように一緒に誰かと暮らす住宅も、細分化・差別化が図られています。繰り返しになりますが、おひとりさまに備えた情報収集をしたうえで、結婚せずに友達と一緒に暮らすという選択は良いと思います。未婚化が進んでおり、そういった住宅は今後ニーズが高まっていくかもしれませんね」

結婚せずとも安心した老後を過ごすためのインフラ整備は進んでいる。その一方、政府はおひとりさまを意識した制度設計に着手しているのか聞くと、議論をしているが進みは遅いとのこと。政府が迅速におひとりさまが不安感なく過ごせる社会の整備を進めることに期待しつつ、今できることとして、おひとりさま関連の情報収集を積極的に取り組んでおきたい。

(取材:望月 悠木)


プロフィール
 
太田垣 章子(おおたがき・あやこ)
OAG司法書士法人 代表司法書士。これまで延べ3000件近くの家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託してきた賃貸トラブル解決のパイオニア的存在。常に現場へ足を運び、滞納者の人生の仕切り直しをサポートするなど、家主の信頼を得るだけでなく滞納者からも慕われる異色の司法書士。家主および不動産管理会社向けに「賃貸トラブル対策」や、おひとりさま・高齢者に向けて「終活」に関する講演も行い、会場は立ち見が出るほどの人気講師でもある。著書に『家賃滞納という貧困』『老後に住める家がない!』『不動産大異変』(ポプラ新書)、共著に『家族に頼らない おひとりさまの終活』(ビジネス教育出版社)など。