病気と悪魔憑きを区別することを定めた

一方の『エクソシスト 信じる者』だが、こちらには若干のネタバレを含む。

同作品にもカトリックの神父が登場し、取り憑かれた二人の少女とその家族に深く同情を寄せるが、この人物は本作の主人公ではない。それどころか、上部機関から許可が下りなかったため、悪魔祓い儀式をドタキャンしており、上部機関が認可を下さなかった理由としては、少女の命を損なう危険性が挙げられていた。

単なる責任逃れのようにも聞こえるが、実のところ、上部機関の判断には根拠があった。前掲『バチカン――ローマ法王庁は、いま』によれば、ヴァチカンは1999年に、エクソシスト向けのガイドラインを1614年以来、初めて改訂している。いきなり悪魔祓いをするのでなく、精神科医と連絡を密にすることを義務づけ、医学的な治療を必要とする病人や「悪魔に憑かれた」と思い込んでいるだけのケースと区別をするよう定めたのだ。

寄せられる相談のうち、本物の「悪魔憑き」である例が極めて稀だからで、その稀な例には以下の特徴が見られるという。

  1. 突然、知っているはずがない外国語を話し出す。
  2. 年齢などからみてありえない怪力を示す。
  3. 物理的に不可能な動作をする。
  4. 十字架など神聖なものを怖がる。

『エクソシスト 信じる者』のなかで、上部機関は実地調査をしてはおらず、少女とその家族に同情するあまり、神父が前のめりにすぎると判断したようにも見て取れるが、そのあたりは脚本上のご都合主義か。

二人の少女の家族は神父の立ち合いがなくとも、協力を約束してくれた仲間たちとともに予定通り、悪魔祓いを開始。素人の混成チームで悪魔に挑むなど、過去のエクソシスト作品には例がなく、果たして結果は? それについては劇場に足を運び、各人でご確認を。

▲ヴァチカン市国 写真:Beautiful World1998 / PIXTA