キャンプ用品やカメラグッズの展開も?

――完成したポーチとキーホルダーは発売から3分で完売しましたが、予想していましたか?

岡:私を含めて3名の担当者がいたのですが、完売までには3日~2週間を要するだろうと予想していました。リアルタイムで状況を見ていましたが、あまりの速さに驚きましたね。クラウドファンディングでの告知はもちろん、TBSと日本テレビのニュース番組で取り上げていただいたのも大きかったと思います。

――商品を購入した人の属性を教えてください。

岡:20代~40代をメインに幅広い世代に受け入れられています。男女比もほぼ半々ですね。今回は丸ノ内線の車両ということで、沿線に住まわれている方、かつて住まわれていた方からも好評でした。

――大反響があった今回のプロジェクトですが、第2弾、第3弾の構想はあるのでしょうか?

岡:今回は初めての試みということで、私たちのアップサイクル製品に対するニーズを検証する側面が強かったのですが、継続のためには利益も必要なので、今後は収益の面もシビアに判断しながら継続する予定です。じつは今回のプロジェクトを提案するときに、説得力を持たせるためにも、まずは自分で端材からペンケースを作りました。

――それは岡さんのハンドメイドですか?

岡:はい、すべて手作りです。素材は南北線9000系の座席シートを使っています。地下鉄の車両はすべて燃えにくい素材を使用しているので、このシートも焦げ付くことはあっても火が燃え広がることはありません。さらに何年も使うので耐久性にも優れています。今後は、アウトドアメーカーと協業してキャンプ用品などが作れたら面白いと考えています。

▲岡さんがハンドメイドした筆箱

――耐火性と耐久性に優れた生地なら、確かにキャンプ用品には最適ですね。

岡:私はカメラが趣味なのですが、カメラと鉄道は親和性が高いので、カメラメーカーと組んでケースとかストラップなんかもできたらいいですね。

アップサイクルの取り組みはストーリーが重要

――ここまでお話を聞いておいてなのですが、こういった前例のない新しい取り組みに対して、社内から反対意見などありましたか?

岡:私が所属する企業価値創造部は、新規事業を生み出すことが目的の部署ですので、新しい取り組みのアイデアも比較的通りやすい環境ではあります。ですので、このプロジェクトを進めるにあたっての疑問点・改善点などはいただきましたが、反対意見などはありませんでした。

とはいっても、ビジネスとして成り立たなければ意味がないので、収益性について今後はより厳しく審査されると思います。今回は丸ノ内線の02系という引退車両がありましたが、常に引退車両があるわけではないのでシートなどの材料も有限です。そこを踏まえてどんなプロダクトを生み出していくか……。

将来的には、このアップサイクルの取り組みをシリーズ化して、今回の丸ノ内線02系で作ったポーチやキーホルダーを他の車両でも展開していきたいですね。マニアの方のコンプリート欲を刺激する製品を作りたいです。

――今後はシート以外の素材を使う可能性もあるわけですよね。

岡:そうですね。ANAさんは整備士の作業着からトートバッグを作っています。東京メトロには駅係員、運転手、車掌の制服に加えて、夜間のレールの交換作業や電気的な点検をする技術系の社員の制服もあります。そういったバリエーションのなかからバッグなどを作っても面白いかと思います。

――同じ上野にある東京藝術大学とコラボなどできたら面白そうですね。

岡:その視点はありませんでしたが、アップサイクルの取り組みはストーリーが重要だと考えています。藝大さんも我々も同じ上野という共通点があるので、なにか新しい企画が生まれたらステキですね。

(取材:松山 タカシ)