常に絵のことを考えて生活してます
ISHIDAさんのイラストからは、アナログ的な質感を感じていたので、フルデジタルで描いていると聞いて少し驚いた。リアルに感じつつも、“確かに絵だ”とも思わせる不思議な魅力。自分の描くイラストについて、どのように分析しているのか気になった。
「いろんな人から“ぬるぬるしてる”とよく言われます。糸を引きそうな感じだって(笑)。私自身、湿度が高いところがすごい好きなので、肌に感じる生温かさみたいなものも意識して描いてますね」
ISHIDAさんのイラストは、リアルな背景と“人外”というファンタジーの組み合わせ。そのアイデアは、どうやって思いつくのだろうか。
「散歩中に風景を見てアイデアを思いつくことが多いですね。アイデアが浮かんだときの場所を写真に撮って、背景の参考にします。日常的に絵のことを考えながら生活してます。というか、考えてないことがないかもしれないです」
常に絵のことを考えていても、まったく疲れないと話すISHIDAさん。息抜きはしていないのか尋ねてみた。
「う~ん……思いつかないですね(笑)。もともと絵が息抜きだったので。そのままでずっと楽しいです。基本、すべての工程が楽しいですよね。実際に描き始めたら1枚6時間くらいで描いちゃいます。構図をどうしようか考えるのが一番時間がかかりますね」
子どもの頃の出来事を絵に落とし込んでいる
SNSにアップされているトビウオのような人魚のイラストは、2枚の連作となっている。1枚目は人魚と少年が海岸で楽しそうに戯れている様子。2枚目は気を失っているように見える人魚を少年が担いで無邪気に笑っている。続けて見るとかなりショッキングだ。この2枚のイラストのあいだにもストーリーがありそうに思い、話を聞いてみた。
「2枚同時に思いついたわけではないんです。最初に1枚目を描いて、ふと2枚目を“あっ”と思いついて描いていった感じですね。SNSでの反響は大きかったです。“ショックを受けた”という反応が多かったですね。“そうだよなぁ”と思いました(笑)」
日常にある怖さを感じるイラストを、どういう発想で描いているかを聞いてみた。
「子どもの頃にあったショックな出来事を、今でも覚えているんですよ。小さな生き物で遊んで殺めてしまう経験は誰しもあると思うんですけど、そういうのを絵に落とし込むように描いています。幼いからこその好奇心と悪気の無さなんですが、いま思うと残酷だなって感じます」
ISHIDAさんにとって転機となった作品は、玄関で女の子がウミウシのような人外を抱っこしているイラストだという。女の子と人外はもちろん、後ろのゴミ捨て場が荒らされてる感じや、ダンボールがまとまってるところとかも気になってしまう、じつに興味深いイラストだ。
「初めてSNSで人外を上げた作品になるんですけど、これを描いたときに“こういうのが描きたかった”と思って。そこからずっと人外を描くようになりました」
ISHIDAさん自身が影響を受けた作品について話を聞いた。
「かわいらしい絵柄みたいなものは、昔読んでた少女漫画が起源かなと思います。ホラー作品が好きだったので、“かわいらしさと怖さを組み合わせたら面白い”っていう発想になったのかもしれないです。
ホラー漫画だと、伊藤潤二さんの作品がすごく好きで読んでました。怖いなかにもギャグがあって、シュールさもあったりして、ちょっと笑っちゃうんです。そこがいいんですよね。映画だと『ミスト』がすごい好きで。はっきりとクリーチャーは出てこないんですけど、物語でどんどん人が恐怖に陥るみたいな感じが好きですね。そういうのを見て、こういう作品が作れたらいいなと思ってました」
最後に今後やりたいことについて聞いた。
「イラスト以外にも表現方法を広げていけたら、というのが目標です。漫画やアニメーションに興味があるんです。フィギュアも作ってみたいですね」
(取材:山崎 淳)