“やっている仕事を好きになる”が本質だと感じる

自らのビジネスに社会的意義をもちながら前へ進み続ける佐田に「好きなことを仕事にする」ことについて聞いた。

「まず、“好きなことを仕事にする”という言葉自体に語弊があると思っています。私は、“やっている仕事を好きになる”ことが、仕事を好きになる本質だと感じているんです。

趣味や興味の延長にあって始めたことでも、仕事になると向き合い方は変わっていきますよね。思い通りにならないことがあったり、苦しいことがあったりしても、それでも楽しさを感じられないと、好きを仕事にしている人とは言えないと思うんです。

たとえば、アウトドア好きを理由に関連会社に入ったとしても、人事や経理など、直接アウトドアに関わらない仕事をしている人もいますよね。そういう人こそ、間接的だとしても“アウトドアの発展に貢献している”というロジックを自分の中で作り、やっている仕事を好きになっている人だと思います。

今の仕事は自分に向いていない。だから、好きな仕事をするために転職するという考えは、じつは逃げているだけの場合が多い。今の仕事を好きになれない人間が、新しい仕事を好きになれるわけがないからです。仕事を好きになれるかどうかは、好きを仕事にできる人間なのかの分かれ道になると思います」

チャレンジを続けている佐田に今後の目標を教えてもらった。

「この会社を今よりもっと魅力的にして、いつかは子どもに引き継ぎたいと思っています。その前に、年商100億円は近い将来に達成する予定です。売上の大きさは、お客さまや社会にどれだけ影響を与えているかに直結するので、これからも会社としての存在意義を数字でも追い求めていきたいですね」

最後に、現在進行中のスーツで百名山を登る計画についても聞いた。

「登るべき山は、まだ60以上(2024年5月時点)も残っています。1年に10回登っても7年かかるので、最低でも57歳までバリバリ動ける体力を維持していくつもりです。その勢いで、経営者としても最前線に立ち続けていこうと思っています」

▲まだまだ佐田展隆の冒険は終わらない

(取材:川上 良樹)


プロフィール
 
佐田 展隆(さだ・のぶたか)
株式会社オーダースーツSADA・4代目代表取締役社長。1974年生まれ。東京都杉並区出身。東京都立西高等学校、一橋大学経済学部を卒業後、東レ株式会社に入社して営業職に就く。2003年、父からの要請により、29歳で株式会社佐田に移り、2005年、代表取締役に就任。破綻寸前の会社を黒字化するも、莫大に抱えた有利子負債の問題を解決すべく2007年金融機関の債権放棄と共に会社を再生ファンドに売却することを決意。経営コンサルタントを経て、2011年、当時のオーナーから再び立て直しを任され株式会社佐田に復帰。再び社長としてオーダースーツの工場直販事業に注力。本格フルオーダースーツ初回限定19800円という衝撃的な価格を打ち出し、業界の風雲児と呼ばれる。自社PRのため、自社スーツを纏い、スキージャンプを飛ぶ、富士山に登る、東京マラソンを走る等のチャレンジを行っている。テレビ東京『カンブリア宮殿』等メディア出演多数。著書に『迷ったら茨の道を行け』。X(旧Twitter):@sandarsn