こんにちはこんばんは、この文章を書いております高橋と申します。

高橋プロデューサー略して「TP」と呼ばれることが多いです。インディアンスきむさん・オズワルド畠中さんと同じ1987年生まれ、誕生日は銀シャリ橋本さんと同じ9月27日、お笑いが大好きです。

「TPコーポレーション東京X」という会社で社長をしていて、テレビやラジオ、ネット配信やYouTubeなど、さまざまなメディアでお笑いやアイドルなどのコンテンツを制作しています。

もともと、僕は「テレビ朝日」という会社に2010年4月に入社し、番組制作に携わる、いわゆる「テレビマン」でした。そして2022年7月31日に退社、翌8月1日に自分の会社を立ち上げて社長になり、今日に至ります。

社長になってからというもの、会社員時代には想像もつかなかった困難の連続で、もがきながらなんとか乗り越えたり、全然乗り越えられなかったりして生きています。

そんな波乱万丈な日々を記録しないのはもったいないということで、今回、日記(というテイの連載)を始めさせていただくことになりました。会社を辞めたいけど勇気が出ない人、社長になりたい人、エンタメ業界で働きたい人などなど、「こんなヤツでもやっていけてるなら大丈夫だな」と、誰かの参考、励み、慰めになったら幸いです。

初回はせっかくなので「会社を辞める」という、人生における一大イベントについて書こうと思います。しかし、会社を辞める際に「辞めてから会社の情報を漏らしちゃダメだよ」みたいな書類にハンコを押してしまったので、話せること話せないことあるんですが、なるべく丁寧に当時を反芻しながら書きたいと思います。

「自分の感性がやんわりと腐っていく」感覚

「会社を辞める」というのは本当に大変だ。

会社にお勤めの多くの人が、多かれ少なかれ「辞めたい」と思ったことがあるはずだ。だけど、いろんなものを天秤にかけて「辞めない」を選んでいると思う。僕の中の「辞める or 辞めない」という“退職天秤”も、ちょっと「辞める」に傾いては、すぐに「辞めない」に戻るという動きを、ここ何年かズーっと繰り返していた。

ありがたいことに、僕は「テレビ朝日」という大企業に就職させてもらえたので、いろんな人に相談をしても、大多数には「辞めないほうがいい」と言われた。

天下のテレビ朝日さまは、給料もいいし福利厚生もしっかりしている。テレビというメディアが斜陽産業だオワコンだと言われていようが、なんせ僕が入社した2010年頃から同じようなことを言われてるのに、多少の変化はあっても相変わらず大企業のままだ。まわりの人が止めるのも無理はない、そこには揺るがない「安定」があるのだ。

しかし、その「安定」は当たり前だけどタダで手に入れられるものではない。会社の業務のなかには、やりたくない仕事だってあるし、苦手な上司もいる。そういうネガティブなモノを飲み込んでの安定なのだ、良薬口に苦し。

大好きな芸人さんに多少無理をさせてでも、年間◯◯◯万円を稼がないといけなかったり、必要以上にコンプライアンスを意識しまくったテロップを入れないといけなかったり。

つまり「安定」を得るためには、対価として「我慢」が必要なのだ。我慢をすれば安定が手に入る、この当たり前なトレードに、僕は「自分の感性がやんわりと腐っていく」感覚を持っていた。

2022年3月末、高橋家(僕・妻・長女・次女)が全員同時にコロナに罹った。しかし幸いにも、みんな軽症だったので、約2週間ひたすら自宅でゴロゴロするという「スーパー春休み」だった。毎日みんなで映画やアニメを観たり、家にある食材でパーティーをしたり、信じられないほど楽しかった。入社以来、ここまでのんびり長い期間を家族と過ごしたのは初めてだった。

予期せぬ休暇によって、やりたくない仕事や苦手な上司と距離を置くことで、日常のささやかな幸せを見逃していたことに気がついたのだ。その年の桜が一番きれいだった。

この「スーパー春休み」によって、僕は会社で我慢をするのが完全にイヤになった。最悪、ただのサボり。僕の退職天秤は急激に「辞める」に傾いた。