世代や性別を超えて沼るデザインを考えているのは?

1枚ゲットしたらその次、さらにまたその次……止まらなくなってしまうモチーフは、どうやって作られているのだろうか。企画会議の様子を聞いてみよう。

「“来シーズンはどういうものを作っていこうか?”という会議はあるのですが、アイデア出しをするような会議は特に設けていないんです。一人のデザイナーが開発しているのですが、その担当者が大半のデザインを考えています」

ワンシーズンで10種以上の商品が誕生するが、そのほとんどを一人の担当者が担っているというから驚きだ。

「デザイナーにアイデアの発想について聞いたところ、小さい頃の思い出や寝ているときに見た夢だったりとか。テレビで海外の人が日本について語っていたときに、オニギリが一番印象的だったと話していたのを見て“そうだ、オニギリを作ろう!”など、さまざまなところから発想しているそうです」

▲オニギリ柄のタオルハンカチ

しかも、かなりアナログな方法でデザインをしているとのことだ。

「制作の過程としては、まずは名刺サイズくらいの小さい紙に、手書きでイラストを書きます。それがだいたい実物のレースのサイズです。これが1ピッチという1リピートのサイズとなります。それをコピーして連続させたりしてデザインとして仕上げ、レースメーカーに送ります。その後、型紙的なものやサンプルが出てきて、通常は2〜4回のやりとりをして完成となります」

このようにして出来上がる近沢レース店のタオルハンカチ。タオルハンカチ維新以前の商品とは様子がガラリと異なるが、常連さんの反響はどうだったのだろうか?

「老舗なので、親子3世代、4世代でご愛顧いただきたいという気持ちを込めて開発しています。もともと人気のあった花柄と、将棋やお寿司のようなユニークなモチーフをバランスよく開発して、既存のお客さまに違和感のないように配慮を心がけています。とは言いましても、定番の花柄もユニークなモチーフも、どちらもお買い求めいただいております」

▲インタビューに答えてくれた近澤レース店営業統括本部長・近澤柳氏

発売当初は、年間で数万枚だったタオルハンカチは、現在では年間90万枚ほど生産するまでになっている。なんと35秒に1枚売れている計算だ。幅広い世代、客層から受け入れられていなければ、これだけのヒットにはつながらない。まさに、時代を超えて愛される存在になっているタオルハンカチだが、近沢レース店はどう捉えているのだろうか。

「コロナ禍を経て、当社のSNSが伸びてきました。そのため、ファンの皆さまとのコミュニティを強化していきたいです。例えば、リアルでお会いできる機会を作るなど、お客さまと店との絆を深めていきたいです」

2024年の秋冬は、8月に「毒きのこ」「おさんぽ」、9月に「勿忘草」「夢喰いバク」、10月に「金木犀」「うに」「くり」、11月に「クリスマスリース」「ワイン」、12月に「一富士二鷹三茄子」のモチーフが発表されている。世代や性別を超えて沼るファンが、より深く沼っていく日も近そうだ。

(取材:中山 美里)