新作が出ると即完売し、お目当てがゲットできなかったと悔し涙を飲む人が続々出没している……と、ネット界で名高いのが近沢レース店のタオルハンカチ。おにぎりや将棋など、タオルのモチーフとしては一風変わったものが登場し、沼るファンを喜ばせ、ファンを増やし続けている。このタオルの制作秘話にニュースクランチがインタビューで迫る!!

▲大人気のビールがモチーフのハンカチ。「とりあえず」の文字入り

老舗レース店から誕生したタオルハンカチ

近沢レース店といえば特別な日に使うもの、贈答品というイメージ。せっかくいただいても「なんだかもったいなくて……」と日常使いできない恐れ多き逸品として、貴婦人のような存在感を明治34年の創業以来、120年以上も放ち続けてきた。

だが、発売したら約3分という光のような速度で売り切れてしまうことが頻出するタオルハンカチときたら? 洗濯機でジャブジャブ洗えて、まさに額汗の相棒。さらには、キッチュでキュートなデザインも魅力だ。

いったいなぜ、淑女の皆さまだけでなく、元気な10代女子や会社員男性までもがこぞって手に入れたくなるような、遊び心あふれる商品が誕生したのだろうか。近澤レース店営業統括本部本部長の近澤柳氏に話を聞いた。

「今から約20年前、周りにぐるりとレースがついたタオルハンカチの映像が残っています。クラッシックなイメージの白いヨーロピアンなデザインのレースです。これが初代のタオルハンカチです。ご好評をいただきまして、その後、タオル生地をカラーにしたものなど少しずつ品番数が増えていきました。当時は年間で数万枚の販売量で、好評はいただいていたものの、主力商品ではありませんでした」

▲初代のタオルハンカチ

この初期モデルが徐々に姿形を変えていき、2014年頃に初めてバイカラーレースの商品が誕生。それは、レースで白とピンクのバイカラーの桜をモチーフとし、桜の季節に発売されて、売り切れたら終了というものだった。

「これも好評だったため、シーズンに応じたタオルハンカチを出していこうとなり、1年後に『シーズンミニタオルハンカチ』の販売をスタートしました。最初は7〜8種類でしたが、これもまたご好評いただきました」

だが、レースは花柄が中心。今あるようなウィットが効いたデザインは登場していなかった。どこに転機があったのだろうか。

「コロナの影響で、2020年頃からオンラインショップでの販売が一気に伸びました。それに伴い購買層に変化があり、1~2世代若くなりました。しかも、オンラインショップの売り上げが、直営店の売り上げと同じくらいか、それ以上か……という勢いになったんです。そのため、商品開発のターゲットをシフトチェンジし、その頃から一気にウィットを効かせたものへと変化しました」

よく売れているのは『ビール』『ミモザ』

これまでに誕生したタオルハンカチのデザインは、なんと250〜300種類。すでに在庫のない商品も多々あるとのことだが、反響が大きかったモチーフは?

「どれが過去一番の人気とは一概に言えないのですが、『ビール』や『ミモザ』はよく売れております。でも、反響という意味では“将棋”かもしれません。一部のコアな人に刺さるとは思っていましたが、ここまで売れるとは……想像の範疇を超えていました」

そして、この将棋のデザインには次のような意味が込められているのだと話す。

「第一弾のモチーフは『銀』と『歩』。このコマって後ろに動けないんです。特に、『歩』は前にしか動けません。そして、今年6月に販売した第二弾は、第一弾の『歩』が成って『と金』です。その『と』と『玉将』がモチーフです。王将でなく玉将としたのは、玉将は挑戦者が使うコマ。謙虚に、あえて玉将としました。さらに文字は『ちょっとまった』と『王手』。タオル生地はリアルな将棋盤になっています」

▲将棋タオル(第一弾 / 左)(第二弾 / 右)

ちなみに、この将棋タオル。有名棋士の奥さまが、第一弾発売時に買えず、どうしても欲しいという熱烈なオファーもあったことから、カムバック発売を決定したそう。第一弾を継承するデザインにはストーリーを感じさせられるが、それは他のデザインにも共通するのだろうか。

「コンセプトとして、“コミュニケーションツールになってほしい”という気持ちがあります。ビールであれば『とりあえず』と文字を入れたり、ロータスという花のデザインでは、花の下にレンコンを入れています。小さな面積のなかに、いろんなストーリーを込めることで会話につながったり、SNSで発信したくなったりすると思うんです」

沼るポイントは、まさしくコレ。 “誰かに話したくなる小ネタ的デザイン”なのだ。