すべての老化の原因は「年齢呪縛」にあった! 高齢者専門の精神科医として6000人以上の患者を診てきた和田秀樹氏がたどり着いた結論です。年齢を気にしすぎることで、心はもちろん、体の老いまでも加速させてしまうとか……。ではどうすればいいのか? まずは年齢呪縛の本当の意味を知ることからはじめましょう。
※本記事は、和田秀樹:著『心が老いない生き方 -年齢呪縛をふりほどけ!-』(ワニブックスPLUS新書:刊)より一部を抜粋編集したものです。
心の自由を奪ってしまう「年齢呪縛」とは何か?
「呪縛」という言葉は少し古めかしいですが、まじないをかけて心の自由を奪うことです。もう少し具体的な説明をすれば、心理的な強制によって人間の自由を束縛することでもあります。
つまり、他者や社会が強制して個人の自由を束縛することです。たとえば、コロナ社会のマスクや移動自粛こそ、まさに呪縛でした。
しかもコロナ社会は、周囲が強制しなくても自分からマスクをつけ、移動を禁じるようにまでなっていました。社会の呪縛が解けてきているのに、自分から解けたものをわざわざ縛り直すようになっていたのです。こうなるともう自縄自縛になります。
年齢呪縛も同じで、しばしば自分自身にまじないをかけてしまいます。実年齢を持ち出して「もういい齢じゃないか」と思い込むことで、心の自由を奪ってしまうのです。
たとえば、付き合っている女性の年齢を聞いて退いてしまう男も、その一例でしょう。それまでは“素敵だな”と思っていた女性の年齢を知ったとたんに、好意や好感を封じ込めてしまうのですから、まさに呪縛です。
この女性の年齢に対する呪縛は、それが自分自身に向けられても同じ結果になります。
「もう80歳なんだから、わがままを言ってはいけない」とか「食べ物も質素にして、着るものだって地味な色を選ばないと」とか、自分の願望をどんどん封じ込めてしまいます。
あるいは何事にも慎重になったり、「もう齢なんだから」と自分にブレーキをかけるようになります。心の自由も行動の自由もどんどん奪われてしまいます。
その結果、どうなるでしょうか。
老いがどんどん固定されてしまいます。年齢通りになってしまうのです。自分から実年齢に合った生活スタイルを選ぶのですから、当然のことです。
すると、見た目の若々しさとか、はつらつさも消えてしまいます。なにより日々の暮らしに楽しみがなくなっていくのですから、せっかく用意された人生終盤の自由な時間を不自由に過ごすしかなくなります。
わたしはこういう状態が「心の老い」だと思っています。