補聴器が必要だと感じたら耳鼻咽喉科へ

「なんだか音が聞こえにくいな」「久しぶりに実家に帰ったら、会話の声やテレビの音が大きいな」。自分や家族に補聴器が必要かも……。そう感じたら、補聴器の購入の前に耳鼻咽喉科の受診へ行きましょう。そう教えてくれたのは、「GNヒアリングジャパン」の広報担当者だ。

「補聴器販売店に行く前に、まずは聴力と耳の状態の検査をする必要があります。補聴器は、聞こえにくい音の高さや大きさを調節して耳に届けることで、聞き取りをサポートするもの。

補聴器を耳に合わせて調整するためにも、どの音がどの程度聞こえているのか(どの音が聞こえにくいのか)を正確に把握する必要があります。検査をして、補聴器が必要だと判断されたあと、補聴器販売店で購入できます」

補聴器1台(片耳)の相場は、約10万~30万円程度。補聴器購入者の50%以上は、この価格帯の補聴器を購入しているとのこと。一方で、周波数ごとに細かな設定ができ、イヤホン機能などが搭載された高性能モデルは1台50万円以上するものもある。高価な買い物だが、聴覚障がいで身体障がい者手帳を持っている場合には、難聴の程度に応じて補聴器購入の助成を受けることができる。そうでない場合でも、所定の手続きを踏めば医療費控除を受けることができる。

「まずは耳鼻咽喉科で補聴器相談医に受診し、検査を受けてください。そのうえで補聴器が必要だと判断されたら、『補聴器適合に関する診療情報提供書』が発行されます。情報提供書を持参し、紹介された認認定補聴器専門店で認定補聴器技能者から購入してください。

補聴器購入費は健康保険の対象になりませんが、この流れで受診・購入すると医療費控除を受けることができます。また、それぞれの自治体で支援がある場合もあります。お住いの地域の制度についても調べてみてください」

▲補聴器を購入する前にまずは耳鼻咽喉科で検査 イメージ: kurotatsu / PIXTA

補聴器相談医がいる病院は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のHPで、認定補聴器技能者がいる認定補聴器専門店は、公益財団法人テクノエイド協会のHPなどで確認ができる。

日本では「目立たない補聴器」が人気

補聴器には、大きく分けて耳かけ型、外耳道内レシーバ耳かけ型、耳あな型の3種類の形状がある。何を基準に選べばいいのだろうか。

「難聴の程度と、装用したときの見た目、取扱いのしやすさなどを基準に選ぶとよいと思います。補聴器は、周囲の音を増幅させて耳に届ける役割を持っており、多くの場合は本体の大きさと音の出力パワーが比例します。そのため、重度の難聴の方には、ある程度の大きさがあり、パワーの強さが特徴の耳かけ型をおすすめしています。

中~軽度の難聴の方、装用時の見た目を気にされる方は、本体が小さい外耳道内レシーバ耳かけ型か、耳あな型がおすすめです。

外耳道内レシーバ耳かけ型は、本体が耳の後ろに隠れる程度の大きさで、前から見えるのは音声を耳の中に届ける細いチューブのみ。小型耳あな型は耳あなの中にすっぽり収まります。どちらのタイプも補聴器が目立ちにくいです。

一方で、イヤホンを使用しているときと同じように、耳あな型を装着していると圧迫感を感じることがあります。そのため、使用時間が長い方は外耳道内レシーバ耳かけ型を好まれることも多いです。

コロナ禍には、マスクへの影響が少ない耳あな型の人気が急激に高まりましたが、状況が落ち着いた今、世界的に外耳道内レシーバ耳かけ型の人気が高いです。軽さを含め装用時の快適性が高く、目立ちにくいことが要因にあると考えられます」

補聴器を選ぶ際、「装用時の見た目」を重視する人が多いようだ。

「じつは、日本で補聴器の関連ワードとして最も検索されているのが“目立たない”なんです。小型で目立ちにくいタイプが人気ですね。

補聴器の大きさと出力は比例するのですが、近年では小型でも音の出力などの機能性を落とさない補聴器の開発が進んでいます。補聴器に抵抗を感じていらっしゃる方にも、小型で高機能な補聴器なら満足していただけるのではないしょうか」

▲業界最小の「外耳道内レシーバ耳かけ型」 写真提供:GNヒアリングジャパン

最新の補聴器は、聞こえを助ける役割を担うだけではない。驚くべき進化をしている。

「補聴器をした上からヘッドホンを装着するとハウリングしてしまうため、補聴器装用者の方からイヤホンなどと同じように音楽・映画やテレビのサウンドを直接聴きたいという声があり、Bluetoothで携帯と接続して音を聴くことができる補聴器が開発されています。

例えば、弊社GNリサウンドの補聴器の最新モデルには、補聴器として世界で初めて「Auracast™ブロードキャストオーディオ」(発信された音声を、複数の機器で一斉に受信できる、新しいBluetooth機能)を搭載しています。公共施設や映画館、美術館などへのAuracast™の導入が進めば、音声情報を直接、補聴器から聴くことができるようになります」

難聴者の多くがストレスを感じている、“雑音のなかでの会話”をサポートする機能の開発も進んでいる。

「周囲の環境を分析し、雑音を抑制したり、音量を自動調整するモデルも登場しています。また、マイクの指向性を変えることで、音を発した方向や距離感をつかみやすくする機能もあります。会話がスムーズに楽しめると、ストレスがたまらず快適に過ごせるようになると思います。

従来は電池交換が必要な電池式の補聴器でしたが、最近では充電式のモデルも多くみられます。また、スマートフォンのGPS機能と連携して補聴器をなくした場合に捜すことができるものなど、どんどん便利になっていますから、生活スタイルに応じて必要な機能が搭載されているものを選んでください」

(取材:三郎丸 彩華)


▲GNヒアリングジャパン 補聴器ブランド「リサウンド」