専業主婦でいることが恥ずかしいという感覚

フランスでは、専業主婦に対してかなりネガティブな印象があります。

日本では「ヨーロッパは日本よりも進んでいるので、共働きの夫婦が多く、働く女性の権利が保障されている」と言い張る人がいます。これには逆の側面があります。

フランスをはじめとした欧州西側では、1960年代に女性解放運動が起こった影響もあってか、女性も男性と同じように働くべきだという同調圧力が強いのです。

もちろん、経済的な理由で共働きでないと、生活が成り立たない家庭も少なくない。そうではなく、男性側がかなり稼ぐ家であっても、女性は「専業主婦です」とは言いにくい雰囲気があります。

専業主婦であっても「私はこのような非営利団体で活発に動いています」とか、何か社会貢献活動をしているというようなことを主張しないと、「何もやっていない無能な人」という烙印を押されてしまいます。

▲専業主婦でいることが恥ずかしいという感覚 イメージ:JackF / PIXTA

特にフランスの場合は、意外にも女性が料理や裁縫や掃除などに熱心なことを強調するのは、むしろネガティブなイメージでとらえられることが多い。そんなことには時間をかけないで、社会参加型の活動をするべきだという同調圧力があるのです。

だから、富裕層であっても家事や育児などは積極的に外注し、地域の非営利団体やチャリティー団体の活動などに熱心な人が多いのです。日本人女性が現地の男性と結婚して、経済的にあまり困っていないので専業主婦をやっていると、周囲の人々から、なぜ働かないのかと、しつこく聞かれることになるでしょう。

健康にもまったく問題がないのに「何もしない人」とみられ、親戚筋や近所の人から怪訝な視線を注がれるのも深刻な問題です。しかも外国人には、地元の社会へ積極的に参加して貢献するべきだという考え方があります。

専業主婦で家に閉じこもっているのは、低賃金の移民や現地に馴染もうとしない閉鎖的な外国人というイメージがあるからです。よって、日本人でフランス人と結婚し、ブログで毎日のように料理や掃除の記事をアップしているような人は、現地の感覚だと単なる無職で社会貢献をしない無能な人となる。

こういった傾向はフランスだけではなく、イギリスでも似たような感覚です。さらに北上した北欧諸国では、もっと同調圧力が強くなります。

北欧諸国をはじめ欧州北部は税金が高いので、働ける人は社会貢献しつつ労働するべきだとの意識が強いです。体調にもまったく問題なく、それなりの教育を受けている女性が家にいて、一日中、料理をしたりテレビを見たりして過ごしているのが許されない。日本に比べると女性のライフスタイルの選択に柔軟性がないといえるでしょう。