憧れの選手が育ったチームのマネージャーになりたくて
一例としてあげさせてもらうと、僕の友人にモモコという女性がいます。
彼女はドーハの悲劇を現地観戦した両親の影響でサッカーにのめり込み、巻誠一郎選手、そしてジェフユナイテッド千葉の大ファンになりました。
彼女は中高一貫の女子校を卒業すると、巻誠一郎選手が所属していた駒澤大学の門を叩きます。そうです。憧れの選手が育ったチームのマネージャーになるために進路を決めたのです。
しかし、駒澤大サッカー部は女子マネージャーを募集していません。なので、彼女は熱意を持って頼み込んでマネージャーを『やらせてもらった』のです。
“大学サッカー部“のマネージャーを、ですよ。
サッカーが好きなら、週1~2回くらいで活動しているサークルのマネージャーという道だってある。周りの女の子たちは華の女子大生を謳歌しているなか、彼女は毎日マネージャー業です。
部活のルールに従って4年間、お酒を飲むことはなかったそうです。夏休みになれば午前中はAチーム、午後はBチーム以下の練習の水汲みやテーピングなど、選手よりも長くピッチに立ち、紫外線に晒されて日焼け。こんなこと、愛がないとできないですよ。
……その反動で彼女は今、大酒飲みとなってしまいました。めでたく昨年、同じ熱量のサッカー好きと結婚することになりましたが、弊害は20代中盤に行っていた合コンの場でも顔を出していました。
軽いパス交換くらいの気持ちで、
「サッカーが好き」
と言った商社マンに
「トルコの名門・ベシクタシュの練習場に入ったことがある」
という、相手が絶対に対応できない高さのハイボールを放り込んだモモコ。
その後も相手の温度に合わせればいいのに、好きな選手を聞かれて「ピシュチェク!」と素直に答えるという、恋愛も『直線的パワープレー』という駒澤大のスタイルに染まりきっていました。
「俺とサッカーどっちが大事なの?」
とスポーツマンの彼氏に言われ、断固として「あなた」とは言わずに別れたこともあるそうです。
それでも彼女は、在学中に天皇杯でFC東京相手に0-0で前半を終えて、沈黙するサポーターの前を悠然と歩きボトル交換する、あのチームへの誇らしさを「何物にもかえられない快感」として、うれしそうに語っていました。
彼女は一般的なマネージャーのなかでも、かなり熱意を持った部類ではありますが、マネージャーにも部活に所属することでしか味わえない興奮や感動があるのです。
そんなチームを支えてくれる大事なマネージャーを、サッカー部員はもちろん、世のサッカー部じゃない方々も、もっとリスペクトを持とうよ! と常々思うのでした。
マネージャーに偏見を持っていた人、全国のマネージャーに敬礼!!
マネージャーを雑に扱っていたサッカー部! マネージャーに土下座!!!