今の若い人はテレビをあまり見ないのでしょう。ということは、テレビCMを見ることもないのでしょう。そういう社会の流れに敏感なのは、僕が芸人だからだと思います。

ここ数年で、お笑い芸人のギャグの作り方の王道パターンであった「CMソングの替え歌」というものが目に見えてウケなくなっていきました。CMという万人が半ば強制的に見てきたものが、そうではなくなってきたのです。

それでも、企業が魂を込めて作ったCMは、時に感動的で、時にユニーク。特に地上波のサッカー中継のあいだに入るCMは、サッカーファンの心を強く打つものが多いのです。

というわけで、今日は個人的『サッカーにまつわる好きなCM』を発表します!

栄光でも、バラ色でもない……でも大切な日々

さて、お気に入りのサッカーCMといえば過去にも触れましたね。ヴァンフォーレ甲府回の冒頭ですか。

『ここから』というCMは、今でも僕の人生No.1のCMですが、Jリーグ公式のCMは神CM揃いです。

今年のチケット無料プレゼントのCMもいいんですよ。今回は複数パターン同時配信で、いろんなスタジアムにいく、いろんな人のCMがあるのですが、どれも良い。誰しもこういった『初めて』があって、こうやってサッカーの輪が広がっていく。

〇スタジアムからはじまる物語「退屈な日常が、この夏、Jリーグで変わる」
〇スタジアムからはじまる物語「夫婦でJリーグに出かけた、はじめての夏」

僕は親の影響で物心ついた頃にはスタジアムに行っていましたが、今は親が興味を持たないと、地上波での放送が少なくなっているサッカー観戦は、だんだんと大衆向けの趣味ではなくなっていくのかもしれません。

そういった危惧があるなか、誰しもにあった初めてのスタジアム観戦を思い出させてくれて、それをサッカーサポーターが拡散することで、より裾野を広げることになると思うんです。拡散したくなるエモさというのは、この時代のCMとして大事な要素だと思います。

うちの奥さんなんか、まさに僕に誘われて槙野智章選手しか知らないけど埼玉スタジアム2002に行き、その後は1人でアウェー観戦にも足を運ぶようになった人です。

「サッカーが楽しくないと観戦デートは無理だった。今でも一緒に観戦しているのは、興梠慎三と出会えたから」

とCMを見ながら教えてくれました。

過去を思い出すCMといえば、学生時代の青春を思い出すウイニングイレブンのこちら。

〇懐かしい!思わず「ウイイレ」がやりたくなる?「ウイニングイレブン」WEB限定動画「#ウイイレまたやろーぜ」

タクシーで居眠りしてしまい、降ろされたところは、あの日のあいつの家。家の中を覗き込むと、あの頃、集まってウイイレをしていたメンバーが……というところから始まるCMは、サッカー部だろうとなかろうと、多くの人が経験したダラダラと青春を浪費するように、延々とウイイレをした日々が甦ります。

「ウイイレをやっていたとき、こんな会話してたなぁ」と、絶妙にツボをつく中身のない雑談。栄光でも、バラ色でもない。こんな思い出が実はすごく大切で、大人になると取り戻せないんですよね。

チラッと映るタクシー会社名『カストロ交通』という遊び心も憎い。カストロ、バロータ、ミナンダにイヴァノフ……みんな愛すべき低スペック選手たちでした。