控え候補のベテラン捕手が目を見張る活躍!

一方で、パドレスに移籍した5選手もそれぞれがしっかりと役割を果たした。特に目を見張る活躍を見せたのが、マイケル・キングとカイル・ヒガシオカだ。

このトレードの目玉でもあったキングは先発投手としてフルシーズン稼働した実績がないという点が不安材料だったが、最後まで離脱することなく走り切り初の2桁勝利と200奪三振も達成。防御率2.95はナ・リーグ4位の好成績であり、オールMLBセカンドチームにも選出された。

ポストシーズンでも、ブレーブスとのワイルドカードシリーズに登板すると、7回無失点12奪三振という圧倒的な投球を見せてチームのシリーズ突破に貢献。続くドジャースとのディビジョンシリーズではテオスカー・ヘルナンデスに手痛いグランドスラムを浴びるシーンはあったものの、リードは守り切り勝ち投手になった。2024年シーズンのパドレスのエースはキングだったと言っていいだろう。

キングが期待されていた通りの活躍を見せてくれたのに対して、期待を大きく上回る活躍で驚かせてくれたのがヒガシオカだ。若手正捕手ルイス・キャンプサーノが守備面でまだ拙いため、控えのベテラン捕手としてうってつけだと思われていたヒガシオカ。当初はナックルボーラーのマット・ウォルドロンら一部の先発投手の専属捕手的立ち位置だったところから、最終的には正捕手にまで地位を向上させた。

特に驚異的だったのは、6月のパフォーマンス。わずか17試合で8本塁打を放ち、スター選手顔負けの大暴れを見せた。キャンプサーノの故障などもあり、それ以降出番が劇的に増え、キャリアハイを大きく更新するシーズン17本塁打を記録。ポストシーズンでも全試合に出場し、ワイルドカードシリーズでは、2試合連続本塁打を放つなど強いインパクトを残した。

この2選手ほどではないが、他の3選手も重要な役割を担った。バスケスは20試合に先発登板し防御率4.87と成績は芳しくなかったが、12試合で5回以上を投げ3失点以内に抑えるなど試合を作る役割をこなした。特にダルビッシュ有とジョー・マスグローブという2人の好投手が同時に離脱している期間中、その穴を埋めることができたのは、数字以上の大きな貢献だった。

ブリトーに関しては、後半戦メジャーで登板したのはわずか1試合だけだったが、まだチームが乗り切れなかった前半戦で25試合に登板。主にロングリリーフの役目をこなし、防御率4点台ながら、前半戦だけで41.1回を投げた。

また、キングと並ぶこのトレードのメインピースだった有望株のソープは、少し違った形でチームに貢献。パドレスに在籍したのはわずか3ヵ月だけで、開幕直前の3月に今度はディラン・シース獲得のためのトレードでメインピースとなってホワイトソックスへと移籍した。

そのシースはリーグ2位の224奪三振を記録したほか、ノーヒットノーランも達成するなど活躍し、オールMLBセカンドチームに選出された。

若手有望株を含んだトレードの場合、その評価が適切にできるのは数年後になる。しかし、このトレードは今が旬の選手ばかりが動いたもので、その中のほとんどの選手が期待通り、あるいはそれ以上の活躍を見せたことで、現時点で既に近年稀に見る”Win-Winトレード”だったと評価することができるだろう。

ヤンキースとしてはワールドシリーズ制覇こそ逃したものの、ソトの活躍で15年ぶりの大舞台に到達することができた。パドレスはこのトレードがあったおかげで、総額8000万ドル以上の年俸削減を行いながらもポストシーズンに進出することができた。さらにヒガシオカ以外の選手は、来年もパドレスに在籍することになる。

現在のFA市場で最も注目されているソトが、この1年でヤンキースの環境を気に入り、再契約の決め手の一つになれば、ヤンキース側としてもこのトレードの評価がさらに上がるだろう。今後もソトの動きには引き続き注目していきたいところだ。

また、今オフもトレード候補として注目されているスター選手は何人もいる。大物が動くトレードが今オフも見られるかもしれない。そういった選手の動きを追いかけるのも、移籍が頻繁に起こるメジャーリーグならではの楽しみ方の一つだろう。今度はどんな移籍が起こるのか、楽しみにしながらオフシーズンを過ごしていきたいものだ。