なんでも「できます!」と言ってみる

佐々木 でも、そりゃそうですよね。原チャリに乗って現れた人間が代表取締役だし、出稿先は、実績もセンスもないフリーペーパー。もう全然相手にしてもらえなくて、半年後に「もうこれやばいぞ」というところまで追い詰められました。せっかく借り入れた1,100万円も、ほぼ半年間で使い切ってしまったものですから……。

新 保 早くも絶対絶命の危機を迎えてしまったのですね……。

佐々木 はい。それで、半ばやけくそで回っていたのですが、どうやったら信用してくれるのかなと考えて、営業先に筆ペンで手紙を書いて封筒に入れて、「これを御社の社長に渡してください」と言いました。それでも全然駄目だったんですが、何回かやっているうちに、とある幼児教室の会社の社長が、何回か手紙を書いたのを見ていてくださって、「なんだ、そいつは?」と興味を持ってくださったのか、ある日行ったら社長が会えることになりまして、社長室に通されたんですね。

新 保 すごい! 手紙を書いた甲斐がありましたね。

佐々木 そこで、自分の思いをぶつけたのですが、「面白いね、でも、全然それ信用できないよ」と言われました。ものすごくダサいので仕方ないですよね(笑)。ただ、「面白いから」ということで、その方がまず10万円ほど出してくださったんです。しかも、「君はパンフレット制作もできるの?」と言われて、とにかく「できます!」と言いまして。

新 保 「とにかくやってみる!」というのが、会長のモットーですね!

佐々木 おっしゃるとおりなんです。まず「できます! 任せてください」と言う。そこで仕事を受けて、またタウンワークでできる人を探すという(笑)。もともと社員は自分1人しかいませんしね。だから、まずは「できます!」と言うのが大事だと思っていました。

新 保 それにより、まず流れが生まれますもんね。

佐々木 ただし、自分には相変わらずデザインや編集や企画の経験もないし、電話であたったその人の仕事ぶりは上手いか下手かを見る目もない……。そんな中で作ったパンフレットを持っていったら、やはり「おまえ、ふざけんなよ」とお叱りを受けました。でも、その幼児教育の会社の社長さんにはかわいがっていただいて、その方の信用で仕事が広がっていったんです。ようやく1年少しで情報誌を出すことができまして、そのうち毎月出せるようになっていった。それで、ようやく広告という業界に入っていったという流れです。

新 保 そこから結構順調に進んだんですか?

佐々木 いえ、やっぱりあまりにダサいというか下手くそなので、クレームも多かったんです。そしてそのクレームをきっかけに、誌面を手伝ってくれる人を募集したんですね。主婦の方、今は子育て中でなかなか隙間時間ぐらいしかないけど、僕を手伝ってくれる経験のある方いませんか、と。ひょっとしたら皆さん、電通にいたかもしれないし、製作会社にいたかもしれないし、出版社にいたかもしれない。そういう方がいらしたら、ぜひご一報ください、と。「隙間時間でも構いませんからアルバイトしませんか?」みたいな内容です。そしたらね、いっぱい来たんです。

新 保 それはすごいですね!

佐々木 そうしたら、博報堂にいたとか、東急エージェンシーでコピーライターしてたとか、そういう人が何人か集まってくれて、デザインも内容も見違えるように良くなっていくんです。そのうちの1人が、今のうちの常務なんです。彼女は、前職がデザイナーなんです。結果、見違えるほどにフリーペーパーのニーズも高まって、それでなんとか回り出したという次第です。

新 保 ついに、回り始めたんですね。このあと、どのようにプロラボにつながっていくのか、ワクワクします!

▲話はいつまでも尽きることはなく。というわけで来週の第2回に続きます
[お話を聞いた人]
佐々木 広行(ささき ひろゆき)
株式会社プロラボホールディングス代表取締役CEO。1968年1月3日神奈川県藤沢市生まれ。1991年早稲田大学教育学部卒業後、セコム株式会社を経て1998年に起業。川崎市創業支援制度を活用し、フリーペーパー発行会社(株)ウィズダム教育通信社を設立。その後、ダイレクトレスポンス広告事業に進出し多数の通販会社の広告制作や商品企画を支援。2002年にエステティックサロン事業を創業。2007年より、ハーブティーや発酵飲料等の高品質インナービューティ製品『Esthe Pro Labo(エステプロ・ラボ)』ブランドを開発し、メーカー事業をスタート。立ち上げから約10年で、国内で約13700店のエステティックサロンやヘアサロン、クリニック等の美容・健康施設に商品供給をするサロン専売ブランドに成長させた。

 『フリーアナウンサー・新保友映の「あの人に会いたい!」』は次回5/7(木)更新予定です、お楽しみに。 

 

聞き手
 
新保友映(しんぼ ともえ)
フリーアナウンサー。山口県岩国市出身。青山学院大学卒業後、ニッポン放送にアナウンサーとして入社。『ニッポン放送ショウアップナイター』『板東英二のバンバンストライク』などでプロ野球の現場取材などを長く担当。その他『オールナイトニッポンGOLD』『高嶋ひでたけのあさラジ!』『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』『三宅裕司サンデーハッピーパラダイス』などニッポン放送の看板番組を務める。2018年6月よりフリーアナウンサーとして活動を開始。プロ野球の取材・コラム執筆、経営者のインタビュー、イベントの司会など、幅広く活躍している。
所属:B-creative agency (http://bca-inc.jp/)
出演:『大石久和のラジオ国土学入門』(ニッポン放送) https://www.1242.com/kokudogaku/