東京女子プロレス所属の瑞希は、1.4後楽園で渡辺未詩に勝利し、2度目となるプリンセス・オブ・プリンセス王座となった。1年3カ月ぶりに王座に返り咲き、もう一度ベルトを巻いたいま、また新たな気持ちが芽生えたと語る彼女に、ニュースクランチがインタビュー。さらに、同じく1.4後楽園でインターナショナル・プリンセス王座となった鈴芽との特別2ショットも収録!

▲瑞希(左)×鈴芽(右)

お客さんに見せたいもの、届けたいものがある

昨年、Netflixのドラマ『極悪女王』が大ヒットしたことで、昭和の女子プロレスラーや関係者を何度となく取材した。そのとき、懐かしさとともに沸きあがってきた感情がある。それは「だから令和の女子プロレスは魅力的なんだな」という再発見、だ。

昭和の時代は25歳定年制という暗黙のルールがあった。だから、団体最高峰のベルトを巻いたら、そこがキャリアハイとなり、王座から陥落することは、そのまま引退勧告を意味していた。よっぽど若いうちにチャンピオンにならない限り、王座返り咲きはまずなかった。

でも、令和の女子プロレスは違う。

2023年3月にプリンセス・オブ・プリンセス王者となった瑞希。3度の防衛を重ね、その年の秋に王座から転落してしまったのだが、今年の1.4後楽園で渡辺未詩を撃破し、1年3カ月ぶりに最高峰の王座に返り咲いたのだ。

前回の王座陥落時に瑞希と話をしたら、こんなことを言っていた。

「チャンピオンだからできなかったことや、チャンピオンを経験したからこそできることってあると思う。これからはそれをやっていきたい。ベルトのことは一旦、忘れますけど、頭の片隅には『いつか絶対に返り咲いてやる』という想いだけは常に残しておいて、チャンスが来たら全力で獲りに行きます!」

まさに瑞希はそれを有言実行してみせた。ワンチャンスでの王座奪還。しかも、抜群の安定感で長期政権を築くだろうと目されていた渡辺未詩を破っての戴冠。まるでベルトに絡まなかったこの1年3カ月が幻だったのではないか、と思ってしまうほど、ドラマティックかつ鮮烈な復活劇だった。

「前回、ベルトを巻いていたときは結構、気を張って防衛を重ねてきたので、ベルトを落としたときには心にぽっかりと穴があいた感覚でしたね。その中で自分がいま、どういう立ち位置にあるのかを理解しようとしたし、いま、なにをするべきかを考えて精一杯、闘ってきた1年3カ月でしたね。

ぽっかり穴があいても、毎週、試合はあるじゃないですか? そんな環境に助けられました。やらなくちゃいけないことがある、毎回毎回、お客さんに見せたいもの、届けたいものがある。だから、手を抜いたりしたことは一回もなかったです」

気を抜かない、手を抜かない。

だからタイトル戦線にこそ絡まなかったが、一発で王座奪還できるだけの地力と集中力は途絶えなかったのかもしれない。

ちょうど同時期、タッグパートナーの坂崎ユカがアメリカのAEWに移籍。ベルトだけでなくパートナーまで失うという、ぽっかり穴があく案件が幾重にも重なっていた。

「そうなんですよね。それまではシングルのベルトに挑戦しつつ、タッグの防衛戦もあったりして、すごくタイトルマッチに絡むことが多かったので、常に「がんばらなきゃ、みんなを引っ張っていかなきゃ!」って気持ちでいたんですけど、パートナーがいなくなっっちゃったから、タッグのベルトに挑戦することもなくなっちゃって。だからこそ、自分の立ち位置ややるべきことを冷静に考えることができたのかも。

そうやって闘っていたら、いままで知らなかった自分の気持ちに気づいたんですよ。まだまだ私にできることがあるんじゃないか、とか。そういう気持ちって無視しちゃいけないよなって。タイトルマッチには絡まないけれど、応援してくれるファンの方にあったかい気持ちになれる試合を届けたい、とか。東京女子のメンバー、みんなでがんばっていきたい、とか……何年やってても、こうやって新しい気持ちって芽生えてくるんですね。いま、もう一度、ベルトを巻くことができて、前回、チャンピオンだったときとは違う、また新しい気持ちがどんどん生まれてきているんですよ」