え……? なにその顔……? まずった?
ここは上司と合わせてビールにしとくべきだった……?
すると、女上司はものすごく落ち込み、
「そうだよね……。うん。……そうだよね……」
と呟いた。
いや、何が!? もう何が起こってんの??
訳わからなすぎてほんと怖すぎるんですけど!!
「なんか聞いたことあるもんな……。それ……」
だから何が!?
「実は……一つ、頼みがあるんだ」
と言うと、上司はなんと……
私に向かって頭を下げたのだ……!
え!? 何? 何が起こってるの!? 怖い怖い怖い!!
誰か助けてぇぇぇ!!!
心の中で至急救助を求める私を気にも留めず、上司は言葉を続ける。
「お願いします。私に……私に……」
「ダイエットのやり方を教えてもらえませんでしょうか!?」
……
???
ダイエットの……やり方……??
「なんか最近すごく綺麗になってるよね? 半年くらい前より絶対痩せてるよね? 全然ダイエットしてる風じゃないのに絶対痩せてるよね!? 絶対なんかしてるよね? 何ダイエット? それ何ダイエットなの? お願い教えて! お願いします!」
おお……すげーグイグイくる……。
「焼酎選んだのもダイエットの一環だよね? なんか聞いたことあるもん。焼酎太んないとか」
確かに私が焼酎を選んだのはダイエットの一環だ。
「選ぶもの大作戦」的に見て、飲みたいものの中で焼酎のソーダ割りが一番カロリーも低くて余分なものが入っていないことを知っていたからだ。
てか、どうやら、上司は私がダイエットしていることに気づいていたようだ。
なんだろう。
あんなツイート(もといポスト)で10キロ痩せなきゃいけなくなったとか恥ずかしくて誰にもバレたくないが、こうして自然に痩せたことに気付かれる分には……
悪くない。
いや、ここは正直に言おう。
ちょー嬉しい。
そんな私に上司は引き続きグイグイくる。
「会社では全然普通に過ごしてるじゃない? なんかたまにお菓子とかこっそり摘んでるの知ってるよ?」
バレてた。
「なのにどんどん痩せてくじゃない? どんどん綺麗になっていくじゃない? 何? どんなことしてるの? どんな過酷な運動を会社帰りにしてるの? あるいは朝活!? 朝活なの?」
「いや、別に大した運動してないですけど……」

「運動……してない……ですって……っ!?」
「あ、最近友人とたまにジムには行ってますね」
「たまにってどれくらい!? 週6?」
「それほとんど毎日じゃないですか。週1行くか行かないかくらいです」

何? 気に入ったのその顔?
「え……じゃあ会社以外では何を食べてるの? 霞食って生きてるの?」
「普通に白いご飯食べて生きてますね」

気に入ったんだね。その顔。
意外と面白い人だっただね。女上司。
「白いご飯って……世間で一番太るって言われているものよ!?」
「ですね。私もちょっと前までそう思ってました」
「どうやって痩せてるの!? 痩せてないとは言わせないわよ!」
「まあ……実は5ヶ月で5キロくらい痩せました」
「ご……ごきろ……!? それ、何キロ??」
「5キロです」
「ああ、そうか」
どうやら上司は混乱しているようだ。
なんか、とても意外だ。
仕事ではあんなに厳しく見えた上司も、プライベートでこうして話してみると、なんだかちょっと可愛く見えてきた。
そんな可愛く見えてきた上司は、引き続き私に懇願してくる。
「教えてお願い!! どうやって痩せてるの? ここはご馳走するから! めっちゃ食べて良いから!」
いやめっちゃ食べたら太るがな、
と思いつつ「私のやり方で良ければ」と上司に答えると、上司はパッと明るい笑顔を浮かべ喜ぶ。
この人って……意外とこう言う人だったんだ。
仕事で厳しいのは、あるいは女性だから舐められないようにとか、気を張ってのことだったのだろうか。
一見厳しそうに見えた上司は、本当は可愛らしい人だったのかも知れないと思うと、
今まで心の中で蹴ってごめんと、ちょっとだけ思う。
そのお詫びと言ってはなんだが、私のやってきたダイエットのやり方でよければお伝えしようじゃないか。