私は上司に
「じゃあお料理、私がいくつか選んでも良いですか?」
「もちろん! あなたが好きなものどんどん食べて!」
「あ、そうじゃなくて。今日二人で食べるもの、私が選んでも良いですか?」
すると上司はピンと来たのか、
「まさか……ここからもうダイエットレクチャーが始まってるのね……!」
おっしゃる通り。
私がいくつかの品を店員さんに伝え、しばらくすると料理が運ばれてきた。
“タラの白子焼き”と“鶏むね肉(皮なし)のたたき”
「私が思うに、ダイエットに一番必要なのは、運動でも食事でもありません。一番必要なのは、知識です。」
上司は「知識?」とピンとこない様子。
「そんな知識で痩せる訳ないじゃーん」とでも言いたげな表情だ。
ふふふふふ。
では、思い知らせてあげましょう。
ダイエットにおいて、知っていると言うことがどれほど強いのかを!!
私は上司に先ほど運ばれてきたお料理を指して、
「この白子100gと、鶏むね肉(皮なし)100g。どっちの方がカロリーが低いと思いますか?」
「いやいや、さすがにわかるよ。ささみでしょ? 白子ってなんかカロリー高そうだし。それに鶏むね肉って、下手したら一番有名なダイエット食材じゃない」
「正解は……
白子です!!」

そう。鶏むね肉よりも、タラの白子の方がカロリーは低い。
タラの白子のカロリーは、100gあたり約60キロカロリー。
鶏むね肉(皮なし)のカロリーは、100gあたり約105キロカロリー。
(食材のカロリーを簡単に調べられるサイト「カロリーSlism」さん調べ)
つまり、白子の方がカロリーは低いのだ!
一見、太りそうなイメージのある白子。
でも実は白子は低脂質で高タンパクな、とても優秀なダイエット食材。(プリン体が多いので食べ過ぎにはご注意を〜)
もちろん鶏むね肉だって十分に低カロリーなので優秀な食材。
でも、白子のように、一見太りそうなのに、実は意外と低カロリーで美味しいダイエット食材は結構存在する。
例えば、この二つなんてどうだろうか!!
うに…… 100gあたり109kcal!!
牡蠣…… 100gあたり58kcal!!

うまい! けどカロリーは低い!
実はそんな意外な食材なんてたくさんある。
そんな食材たちを“知っている”ことが大切なのだ。
「知らなかった……! 確かに、ダイエットには知識が大切だわ……」
その後、私は上司に「選ぶもの大作戦」と「ざっくりレコーディング」を伝える。
どっちもなんの準備もなく、明日からすぐにできる方法だから、まずは試して欲しいと伝え、上司も「うん! やってみる!」とかなりやる気だ(てか素直なの可愛いな上司よ)。
そして、私もなんだかやる気になった。人に気付かれて、それを教えてくれとまで言われたら、なんかさらに痩せたくなっちゃうじゃないよ〜。
やっぱり、1ヶ月に1キロペースではなく、2キロ痩せようとしてみようかな?
そう思う私に上司が
「有酸素運動とかはやらないの? 歩くって痩せるって聞いたことあるんだけど」
なるほど。ジムにホイホイいくのはしんどいが、歩くのはどれだけ私が運チだからって関係ない。
2キロペースにするために「選ぶもの大作戦」と「ざっくりレコーディング」をしながら歩いてみるのは悪くはないかもしれない。
その後、なんだかんだとダイエット談義をしながら、楽しく上司と食事を楽しんだ。
帰り際になり、私はふと疑問に思ったことを上司にぶつけてみた。
「そういえば、なんで急にダイエットしようなんて思ったんですか?」
すると、上司の表情がグッと深刻そうになる。
「私……、どうしても……どうしても痩せないといけない理由があるの」
どうやらのっぴきならない事情があるみたいだ。
もしかして……恋、とか……?
確か上司は独身のはず。
密かに想いを寄せる人に振り向いてもらうために痩せたいってことか?
などと妄想を膨らましていると、
上司が、痩せなきゃいけない理由をボソボソと話し始めた。
「実は……私ね、3ヶ月後に1ヶ月ほど休職することになっててね」
休職?
も、もしかして何かの病気とか……そう言うこと……?
1ヶ月入院する予定だから、休職すると言うことか……。
その病気は、隠れ肥満が原因で、だから痩せないといけないとか……。
それは深刻にもなるはずだ。
……いや、でも待てよ。
それなら3ヶ月後ではなく、すぐにでも休職するべきなのでは……
私は「3ヶ月後に休職って……どんな理由で……?」と、失礼にならないよう、出来るだけ神妙に上司に聞いてみた。すると上司が、
「私ね……」
と、深刻そうに切り出し、そして、こうつづけた。
「私……恋愛リアリティショーに出演することになったの」
……
??????
れんあいりありてぃしょー??
って例えば……大富豪の妻になるべく女たちが強烈バトルでしのぎを削る、あの恋愛リアリティーショーですか??
“意外な理由”とかではなく、もはや回答が斜め上すぎて、なんていえば良いのかさっぱりわからない。
上司は、顔を伏せ、少々顔を赤らめているようにも見える。
「なんかね、たまたまハマってみてた配信番組があってね。で、もうノリで、軽――いノリで応募してみたのね。じゃあ、なんかわからないんだけど、それが当選しちゃって……。いやもうほんとそうなったらよ? ここはもう一世一代の大チャンスだって思っちゃってね! いや恥ずかしいわよね。恥ずかしいんだけどね。でもここでやらなきゃもしかしたら一生後悔すかもって思ってね」
と、その後もベラベラと話しづつける女上司。
えーっと。
うん。
聞かなきゃよかった。
10キロ痩せるまで、あと5キロ──