アーティストでもあり俳優でもある高野洸が、対談を通してアートの世界に触れ、表現を学ぶ「お訪ねアトリエ」。今回のゲストは、阿南さざれさん。
木目の上に人や動物などのモチーフをはっきりとした線で描き、カラフルな色で装飾された作品が特徴的な阿南さんの作品は、現代アート的なデフォルメと木という素材のコントラストがとてもおもしろい。“諸行無常”という儚さをコンセプトにしている彼は、一体どのように作品を制作しているのか、アトリエを訪ねてたっぷりとお話を聞いた。

“プックリ”を作る意外な画材
阿南:ちょっとだけ、高野さんのプロフィールを拝見いたしました。
高野:ありがとうございます。
阿南:『BLEACH』の舞台に出演されているんですね。
高野:はい、8年くらい前ですね。
阿南:『BLEACH』は、マンガが僕の学生時代にドンピシャなんです。あんまり僕はマンガを買う習慣はないんですが、唯一買って読んでいたのが『BLEACH』なんです。面白いですよね。
高野:そうだったんですね。僕は当時小学生くらいで、ダンススクールに通っていたりして、アニメやマンガを見る機会が少なかったんですが、舞台出演でお声がけ頂いて、思い入れのある作品になりました。面白いですよね。
阿南:高野さんは何をきっかけに僕の作品を見てくださったんですか?
高野:いろんな画家の皆さんが参加されていた展示会で阿南さんの作品を初めて拝見しました。そこが最初ですね。そこで見た作品が、線がぷっくりしていて、何の画材を使ってるんだろう? って、思ったんです。
阿南:画材は、アクリル絵の具なんですけど、膨らんでいる部分はレジンっていうのを使ってます。僕は以前、作家の京森康平さんのアシスタントをしていて、そこで2年くらい修行をしていたんです。その時、京森さんもレジンを使っていて、その時の経験を自分の作品にも応用しているという形ですね。
高野:へぇー! 絵の具ではないんですか?

阿南:樹脂ですね。紫外線で硬化させるプラスチックのようなものですね。
高野:レジンに色を混ぜているんですか?
阿南:レジンで形を作って、その上から絵の具を塗っています。
高野:そうなんですね。
阿南:なんでこんな膨らませているのかというと、それは作品のコンセプトに理由があります。諸行無常という一つのキーワードがあって、すべてのものが移り変わっていく途中であるという仏教用語で、仏教の大事な概念の一つです。僕の作品は全部、今ある色が完成形ではなく、そこからまたどんどん色が変化していくという構造になっています。これが自画像なんですけど。モチーフは歌舞伎の始祖と呼ばれる人です。
高野:なるほど。
阿南:白がかかっているじゃないですか、これは一旦塗りつぶすような作業をしているんですが、元々あった色に対して一旦リセットのような感覚で塗りつぶして、そしてまた新しい色が入っていくという、これが新しい色が入る前の段階です。

高野:これが完成ではなくて、また入れるんですか。
阿南:はい、また色が入ります。一見仕上がっている作品もまたいずれ白をかけて色を潰して、また色を足して。これが作品の大事なコンセプトです。なぜそういうふうに至ったかというと、コロナ禍だった時に、“あれがいい、あれが危ない”とか、色んな情報があって、仲がいい友達とも意見が変わったりして、生きてると色んなことを学んだり、影響を受けて変化していくんだなって。
それが儚いというか…。悲しい儚さですかね。そこに衝撃を受けて、全部変わっていくんだっていう、その印象深い時期があって、そこから始まったんですよ。