私を求めてくれる、愛おしい存在ができた。

シルバータビーの美しい毛並みに、エメラルドをはめ込んだような緑の瞳。私の名前から「鈴」という文字をとって「ベル」と名付けた。

リビングに、ベルのためのケージを組み立てた。その間、ベルが見慣れた景色の中をトコトコと歩いている。まだ違和感があるその様子を、家族全員で見守った。それだけで、冷えきっていたわが家に温かな光が差したような気がして、胸の奥がじんわりと熱くなった。

私が用意したご飯を、ベルは食べてくれた。進みは遅いし、少し残してはいたけれど、自分を受け入れてくれたようで、たまらなく嬉しかった。

「初日は環境に慣れさせるため、あまり構いすぎないように」とアドバイスされていたので、言葉通り、名残惜しさをこらえてベルをケージに入れ、私は横になった。

けれど、やっぱり眠れない。静まり返った暗闇のなか、いつものように眠れないまま、ただ天井を見つめて時間が過ぎるのを待っていた。

ところが、しばらくすると、何かが私のベッドの上に勢いよく飛び乗ってきた。

 

暗闇のなか、突然のことにびっくりして、思わず身体が跳ねる。

何かと思ったら、そこにいたのはベルだった。

「扉を閉め忘れたかな?」と思い、私はもう一度ベルをケージの中へ戻した。しっかり扉が閉まってることを確認してからベッドへ戻り、再び横になろうとした瞬間、またしても小さな影が走ってきて、迷いなく私の体の上に飛び乗ってきた。

ケージから私のベッドまでの間には、母と姉のベッドもあったはずなのに。ベルは一番遠くにいる私のところへ一目散に走ってきてくれたのだ。

でも扉は閉めたはず。何が起きているのか分からず、ただ困惑した。暗闇の中、胸の上にぽすんと乗った、温かな重み。なんとも言えない感情が込み上げてくる。

ベルを抱き上げ、またケージの中へ戻した。今度はベッドに戻らず影からそっと様子を伺ってみた。すると、ベルはまだ体が小さすぎて、ケージの隙間にするりと体をねじ込み、自力で脱走していたのだ。

一目散に私のベッドへと走り出す後ろ姿。けれど、主のいないベッドの上で困惑しているようなベルの姿を見た瞬間、胸がぎゅっと締め付けられた。それから、笑いが止まらなくなった。

私を求めてくれる、愛おしい存在ができた。

 

険悪だったリビングに笑い声が戻った

それから、私が部屋に引きこもっているとき、ベルはいつもそばにいてくれた。朝は私の足を甘噛みして起こしてくれた。昼は動けない私と一緒にお昼寝をして、夜は元気いっぱいに部屋を走り回る。ひとしきり暴れて疲れ果てたあとは、また私のベッドへ飛び乗ってきて、一緒に眠りにつく。

両親と喧嘩して、逃げ場のない部屋で一人声を殺して泣いている夜も、寄り添ってくれたのはベルだった。

ベルが家に来てから、少しずつ、けれど確実に、空気が変わり始めた。腫れ物に触れるようだった会話の中に、ベルという共通の話題が生まれた。私たちの夕食を虎視眈々と狙うベルの姿に、険悪だったリビングに笑い声が戻った。

家族の間にあった見えない壁を、ベルがその小さな体で少しずつ壊してくれた。

何より、自分の家の中でさえ安心できる場所がなかった私に、ベルは居場所を作ってくれた。ベルという存在がいるだけで、どんなときも張り詰めていた心がすっと緩み、心から安心できた。

私の名前から一文字とったその名は、止まっていた私の時間を動かす合図だったのだと思う。

あの日、光を失っていた私の世界に響き渡った、愛おしい「鈴の音」。

 

次回のHKT48 梁瀬鈴雅「鈴の音」は、5月末更新予定です お楽しみに!!


プロフィール
 
梁瀬 鈴雅(やなせ・れいあ)
加入期 6期生 2022年5月
ニックネーム れいあ
生年月日 2006年6月29日
血液型 B
出身地 神奈川県
身長 170cm

趣味・特技
音楽鑑賞・楽器演奏・楽譜、楽器集め・ゲーム・フィールドホッケー/約30種類の楽器を演奏できること・努力・常磐津

メッセージ
自分自身がHKT48の元気と明るさに救われた経験があるからこそ、私も誰かに元気を与えられる存在になりたいと強く思っています。私のパフォーマンスで誰かの心を動かすことができるよう、常に全力で、全身全霊で頑張ります。ぜひHKT48劇場に会いに来てください。絶対に後悔させません!

梁瀬 鈴雅 ​HKT48 公式プロフィール