ロックフォール

くさい度数★★★★

世界三大ブルーチーズの3つめは、フランス産のロックフォールである。三大ブルーチーズの中で、唯一、ヒツジの乳を原料としているのが特徴で、堂々たる存在感と伝統、そして完成度の高さからブルーチーズの王様といわれている。

▲ヒツジの乳が原料 イメージ:PIXTA

歴史が古く、昔からフランスのロックフォール村にある岩山の洞窟の中で、そこに存在する青カビ(ペニシリゥム・ロックフォルティ)を使って熟成されてきた。現在もこの洞窟で熟成され、規定どおりの製造法でつくられたものだけが、ロックフォールを名乗ることができる〔フランスの原産地統制呼称の指定=AOC〕

濃厚で深いコクがあり、白い地肌の部分の食感はなめらかだが、青カビの部分はざらついた舌ざわりで、塩味がとても強く、鼻をつくにおいもかなり刺激的だ。においの元はもっぱら青カビが乳脂肪を分解することで生まれる特有のにおいで、原料のヒツジの乳のにおいを消し去るほど凄まじく、「通好み」のチーズである。

▲不思議な魅力があるブルーチーズ イメージ:PIXTA

いずれにしても、ブルーチーズの中でも非常にクセが強いため、初心者にはハードルが高いだろう。しかし、いろいろなブルーチーズを食べて、その風味に慣れていくうちに、ロックフォールの魅力に目覚める人も多い。いったんはまるとその風味のとりこになってしまうから不思議である。

自らを“発酵仮面”と称し、世界中のチーズを食べつくしてきた小泉教授に、それぞれの「くささ」の度合いについて星の数で五段階評価してもらった。 発酵食品は宿命的に、くさいにおいを宿しているが、それこそが最大の個性であり魅力なのだ。

「くさい度数」について
★あまりくさくない。むしろ、かぐわしさが食欲をそそる。
★★くさい。濃厚で芳醇なにおい。
★★★強いくさみで、食欲増進か食欲減退か、人によって分かれる。
★★★★のけぞるほどくさい。咳き込み、涙する。
★★★★★失神するほどくさい。ときには命の危険も。

※本記事は、小泉武夫:著『くさい食べもの大全』(東京堂出版:刊)より、一部を抜粋編集したものです。