すぐき漬け(酸茎漬け)

くさい度数★★★

京都の三大漬物のひとつが、すぐき漬けである。

京漬物の盛り合わせ イメージ:PIXTA

江戸時代(1697年)に発刊された『本朝食鑑』に、「洛外の賀茂の里人のつくる酸味を生じたものは酸茎(すいぐき)といって賞味されている」とあり、すぐき漬けが300年以上前から食されてきたことがわかる。また、上賀茂神社の神宮の門外不出の神社贈答品として、すぐき漬けが使われていた時代もあったようだ。

すぐき漬けというのは、京都・上賀茂地区を中心とした限られた地域でつくられるカブの一種「スグキナ(酸茎菜)」を塩だけで漬け込み、乳酸発酵させたものである。

京都へ行くと、スグキナの円錐形の根株に茎をくるくるっと巻きつけた、とても愛らしい形で売られている。乳酸発酵させているから、やはり強烈なにおいと酸味があるが、いったん好きになると、それが逆にクセになってポリポリと夢中になって食べてしまう。

すぐき漬け イメージ:PIXTA

そのままで十分うまいが、食べ慣れない人には酸味の強さだけで、ちょっと物足りないかもしれない。そんなときは、醬油や七味唐辛子、炒りゴマ、サンショウなどをかけると、それぞれの味わいを愉しめるし、酒を少しかけると、酸味がやわらいで食べやすくなる。

しかし、強い酸味とにおいは、すぐき漬けの特徴であるから、できればそのままの風味を愉しんでいただきたい。すぐき漬けを刻んで、炊き立てのごはんや茶漬け、粥にのせて食べるのもおすすめである。

自らを“発酵仮面”と称し、世界中の漬物を食べつくしてきた小泉教授に、それぞれの「くささ」の度合いについて星の数で五段階評価してもらった。 発酵食品は宿命的に、くさいにおいを宿しているが、それこそが最大の個性であり魅力なのだ。

「くさい度数」について
★あまりくさくない。むしろ、かぐわしさが食欲をそそる。
★★くさい。濃厚で芳醇なにおい。
★★★強いくさみで、食欲増進か食欲減退か、人によって分かれる。
★★★★のけぞるほどくさい。咳き込み、涙する。
★★★★★失神するほどくさい。ときには命の危険も。

※本記事は、小泉武夫:著『くさい食べもの大全』(東京堂出版:刊)より、一部を抜粋編集したものです。