搾菜(ザーツァイ)

くさい度数★★

中国の漬物の中で、日本で最もよく知られているのが搾菜であろう。中華料理屋はもちろん、近所のスーパーなどでも普通に購入できるポピュラーな漬物だ。日本だけでなく、世界的にも有名で、中国の主要な輸出商品のひとつとなっている。

搾菜 イメージ:PIXTA

搾菜はもともと野菜の名前である。

カラシ菜という植物の一種で、肥大化して塊状になった茎を塩漬けし、そのあとの本漬けで白酒(パイチュウ)や八角、サンショウ、甘草、桂枝末、トウガラシ、ショウガなどの香辛料と一緒にかめに漬け込み、乳酸発酵させる。この間、蓋をきちっとしたかめを逆さにして空気との接触を断ち、じっくり発酵させるのがポイントである。

中国・四川省の特産品で、有名なわりに歴史は浅く、中国国内でも本格的に市場に流通するようになったのは、わずか100年ほど前のことである。

中国では、粥に添えて生のままよく食べられているが、脂っこい料理との相性も抜群で、炒めものや煮もの、スープの材料にも使われる。中華まんやギョウザの具にもなっている。

中華粥 イメージ:PIXTA

個性的な酸味としこしこした歯ごたえは、日本の古漬けと並んで、漬物中の傑作といえる。乳酸菌による発酵食品特有のくさみがあるが、どこか郷愁をおぼえる牧歌的なにおいである。

私の場合は、軽く塩抜きと酸味抜きをしたものを油炒めにして、酒の肴にするのが大好物だ。

また、チャーハンの具として使ったり、細かく切って雑炊に入れてもうまく、カロチンやビタミンCの補給源にもなる。

自らを“発酵仮面”と称し、世界中の漬物を食べつくしてきた小泉教授に、それぞれの「くささ」の度合いについて星の数で五段階評価してもらった。 発酵食品は宿命的に、くさいにおいを宿しているが、それこそが最大の個性であり魅力なのだ。

「くさい度数」について
★あまりくさくない。むしろ、かぐわしさが食欲をそそる。
★★くさい。濃厚で芳醇なにおい。
★★★強いくさみで、食欲増進か食欲減退か、人によって分かれる。
★★★★のけぞるほどくさい。咳き込み、涙する。
★★★★★失神するほどくさい。ときには命の危険も。

※本記事は、小泉武夫:著『くさい食べもの大全』(東京堂出版:刊)より、一部を抜粋編集したものです。