ギリシャ、ローマから中世ヨーロッパまで

西洋文明の系譜は、メソポタミアやエジプト文明から語られる。そして、ギリシャ文明、ローマ文明、ビザンティン文明、ロマネスクやゴシックなど中世ヨーロッパ文明につながる。

「帝国」というものの建設に成功したのは、まずアッシリアであり、アケメネス朝ペルシアがそれに続いた。『アッシュールナツィルパル2世像』や『スーサのペルシアの弓兵』(紀元前6世紀/ルーヴル美術館)がそれぞれの代表的な遺品だ。

そのペルシアの侵略に長く抵抗し、マケドニアのアレクサンドロス大王とともに逆襲して破ったギリシャ文明は、彫刻や陶器などにすぐれたものを残した。彫刻では『ミロのヴィーナス』(ルーヴル美術館)が最高傑作だが、ほかに、『アテナイのパルテノン神殿のレリーフ』(大英博物館)や『サモトラケのニケ』(ルーヴル美術館)など。

▲ミロのヴィーナス イメージ:PIXTA

ローマの彫刻では、複数の人々の悲劇を見事に表現した『ラオコーン』(紀元前1世紀/バチカン美術館)や『サン・マルコ寺院の4頭の馬』(1世紀)、『マルクス・アウレリウス騎馬像』(ローマ・カンピドーリオ広場)を挙げておく。

▲ラオコーン イメージ:PIXTA

初期キリスト教美術は、ローマ美術の延長だったが、やがて東ローマ帝国の支配下でビザンティン様式として花開いた。モザイクによいものが多く、その代表はラヴェンナのサン・ヴィターレ教会の『ユスティニアヌス帝と重臣たち』(6世紀)を描いたものだ。

中世教会美術では『ランス大聖堂の微笑みの天使』と『シャルトルのカテドラルのステンドグラス』を挙げる。貴人の棺には彼らの姿がリアルに彫刻されているが、ディジョンにある『フィリップ豪胆公(ごうたんこう)の墓』はブルゴーニュ公国の繁栄の象徴だ。

タペストリーや羊皮紙を使った豪華な書籍も流行したが、代表作は『貴婦人と一角獣』(15世紀/クリュニー美術館)と『ベリー公のいとも豪華なる時祷書(じとうしょ)』(15世紀/シャンティイ・コンデ美術館)。

シチリアではビザンティン、イスラム、ノルマンの伝統が結合した中世美術の集大成的な文化が栄えたが、『パレルモの王宮のモザイク』を挙げておく。

そして、13世紀には西洋絵画芸術の創始者というべきジョット・ディ・ボンドーネが登場した。傑作は枚挙にいとまがないが、パヴィアの『スクロヴェーニ礼拝堂の壁画』を第一に挙げるべきだろう。徳島の大塚国際美術館で完璧な立体再現がされている。

同時代にシモーネ・マルティーニらシエナ派の画家たちが、より優雅な筆致で中世とルネサンスの橋渡しをした。

※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。