民族性を色濃く反映したロシアの名曲
ロシアでは5人組という作曲家グループが民族派的な作品を生み出した。ピョートル・チャイコフスキーは「5人組」よりヨーロッパ風の洗練された音楽をつくった。
モデスト・ムソルグスキーは、オペラ『ボリス・ゴドゥノフ』やピアノ組曲『展覧会の絵』が知られる。後者はモーリス・ラヴェルが見事なオーケストラ作品に編曲して、そちらのほうがよく知られている。
アレクサンドル・ボロディンのオペラ『イーゴリ公』は、そのなかの『韃靼人の踊り』や『中央アジアの草原にて』が人気。オーケストラから多彩な響きを引き出す名人が、ニコライ・リムスキー=コルサコフで『交響組曲“シェエラザード”』は『アラビアンナイト』を題材にした大作だ。
チャイコフスキーのバレエ組曲『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『眠れる森の美女』、交響曲第4番、第5番、『第6番“悲愴”』、超絶技巧を要する『ピアノ協奏曲』、叙情的な『ヴァイオリン協奏曲』、交響詩『ロミオとジュリエット』など。
ロシアのヴァーツラフ・ニジンスキーという舞踏家が、パリなどで活躍していたが、そのためにイーゴリ・ストラヴィンスキーが作曲したのが『火の鳥』『ペトルーシュカ』『春の祭典』だ。『春の祭典』は異教的な荒々しい響きが大スキャンダルを引き起こして、初演のときは場内が騒然となった。『ペトルーシカ』はピアノにも編曲されている。
セルゲイ・プロコフィエフは、形式的には古典的なスタイルを取るが、和声がみずみずしく新しい響きを示している。ロシア革命後に亡命したがソ連に戻った。バレエ音楽『ロメオとジュリエット』、音楽物語『ピーターと狼(おおかみ)』、交響曲第1番『古典的』、交響曲第5番、ピアノ協奏曲第3番、映画音楽『アレクサンドル・ネフスキー』など。
セルゲイ・ラフマニノフは、20世紀前半を代表する名ピアニストだが、作曲家としても重厚で、ほどほどに民族的な響きの名曲を多く作曲した。最高傑作は『ピアノ協奏曲第2番』だが『第3番』も人気があるし『交響曲第2番』『パガニーニの主題による狂詩曲』『前奏曲集』『ヴォカリーズ』など人気のある曲が多い。
ドミートリイ・ショスタコーヴィチは、かつてはソ連体制派の作曲家と見られていたが、のちにその苦悩が浮き彫りになった。交響曲を15曲書いていずれも名作とされるが、最も有名なのは『第5番“革命”』である、大戦中のレニングラード包囲戦のなかで書かれた『第7番“レニングラード”』、それにヘルベルト・フォン・カラヤンが取り上げて有名になった『第10番』など。
※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。