古代ギリシャ人が生み出した哲学

哲学は、現在のトルコ南西部の都市であるミレトスで生まれた。ギリシャ人たちは「人間とは何か」「いかに生きるべきか」を考え議論することを好み、紀元前5世紀の末から紀元前4世紀にかけて活躍したソクラテス、プラトン、アリストテレスを生んだ。

▲ミレトスの野外劇場 イメージ:PIXTA

ソクラテスは著作を残さず『ソクラテスの弁明』『国家』など、プラトンの著作を通じて、その哲学を知ることができる。プラトンは普遍的で完全な真実の世界を、思弁によって認識しようとして「イデア」という概念を追究し、ポリス運営の考え方の体系として思想をまとめ、アカデメイアを設立して普及に努めた。

プラトンの弟子アリストテレスは、現実社会に適用されるように経験論、科学の重視を打ち出した。『形而上学(けいじじょうがく)』『政治学』などが講義録などの形で残っている。

ローマでは禁欲的なストア哲学が盛んとなり、ゼノンがその創始者であり、ルキウス・アンナエウス・セネカなどが発展させた。セネカは雄弁術においても知られ『幸福な人生について』などの随筆や「人生は短いのではない。われわれがそれを短くしているのだ」といった名言の数々で知られる。マルクス・アウレリウス・アントニヌスは五賢帝の最後で『自省録』で知られる。

▲ローマの街並み イメージ:PIXTA

ギリシャ人は吟遊詩人が物語るのを聞くことを好んだが、その最高峰がトルコのイズミルに近いキオス島出身のホメーロスで『イーリアス』『オデッセイア』であることはいうまでもない。

また天候がよいギリシャでは、野外劇場での演劇が好まれ『アガメムノン』のアイスキュロス、『オイディプス王』のソポクレス、『エレクトラ』のエウリピデスという三大悲劇作家や『女の平和』のアリストパネスなど喜劇作家が活躍し、それらは現代においても、各国語での鑑賞に堪える永遠の価値を発揮している。

また『歴史』のヘロドトスは、歴史という分野を確立したパイオニアである。ローマでは『アエネーイス』のプーブリウス・ウェルギリウス・マーローの叙事詩や、ガイウス・ユリウス・カエサルの『ガリア戦記』、コルネリウス・タキトゥスの『ゲルマニア』といった戦記物にすぐれたものが多い。

人類最古の文明が栄えたメソポタミア・バビロンにおける『ハンムラビ法典』は「目には目を」という公平性の原則、弱者保護といった法思想をかなり実現していた。ルーヴル美術館で見ることができるハンムラビ法典の石碑は、1901年にイランのスーサで発見され、法秩序の原典ともいうべきものだ。

これを超えたのは、東ローマ帝国のユスティニアヌス大帝による『ローマ法大全』で、1800年前後の『ナポレオン法典』の編纂に至るまで、欧州の法規範となった。

※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。