戦後フランスで生まれた「ヌーベルバーグ」

フランスのヌーベルバーグ(新しい波)では、時間の経過を無視して同じアングルのショットをつなぎ合わせるジャンプカット、手持ちカメラでの街頭撮影など即興的、実験的な映像を特徴とする。下積み経験なしで映画を製作するヌーベルバーグなどが大きなムーブメントになった。

▲戦後フランスで生まれた「ヌーベルバーグ」 イメージ:PIXTA

ヌーベルバーグでは、ジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』(1960年/フランス)がその代表作。ジャン=ポール・ベルモンド、ジーン・セバーグの主演。その原案を書いたのがフランソワ・トリュフォーで、初期の代表作は『大人は判ってくれない』(1959年)だが、ここでは後期の作品でクラシックな色彩の『終電車』(1980年)を挙げておく。カトリーヌ・ドヌーヴの代表作のひとつだ。

『去年マリエンバートで』(1961年)は、アラン・レネが監督したモノクロ映画で黒澤明(くろさわあきら)監督の『羅生門』に触発されたという。ココ・シャネルが衣装をデザインした。『太陽がいっぱい』(1960年/フランス・イタリア)は、アラン・ドロンを人気者にした名作でテーマ音楽も人気。

▲東京都・東郷寺の門(映画『羅生門』のモチーフ) イメージ:PIXTA

戦争直後の映画としては、イタリアのヴィットリオ・デ・シーカ監督によるネオリアリズモ作品『自転車泥棒』(1948年/イタリア)が、貧乏だった時代の日本人にも身につまされるものがあり感動を与えた。

その後のイタリア映画では、ミケランジェロ・アントニオーニは現代人の孤独や絶望感を描き『情事』(1960年)や『太陽はひとりぼっち』(1962年/イタリア・フランス)が代表作。戦後ローマの上流階級の退廃的な雰囲気を描いたのが、フェデリコ・フェリーニの『甘い生活(ドルチェ・ビータ)』(1960年/イタリア)。同監督の作品では、現実と虚構の世界が交錯する『8 1/2』(1963年/イタリア・フランス)も名作。

ミラノ大公家出身のルキノ・ヴィスコンティは『夏の嵐』(1954年/イタリア)や『山猫』(1963年/イタリア・フランス)などで、没落していく貴族階級の夕暮れを見事に描いた。植民地独立戦争をドキュメンタリー的に描いた名作が、ジッロ・ポンテコルヴォの『アルジェの戦い』(1966年/イタリア・アルジェリア)である。

スウェーデンのイングマール・ベルイマンは『仮面/ペルソナ』(1966年/スウェーデン)など。ソ連でも徐々に自由な発想の映画がつくり始められたが『アンドレイ・ルブリョフ』(1966年/ソ連)は、アンドレイ・タルコフスキー監督。15世紀のイコン画家を主人公に、社会のさまざまな状況と人々との関わりの中で苦悩する芸術家の内面を浮き彫りにしていった。同監督のもうひとつの傑作は『鏡』(1975年)だろう。

※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。