人を動かすマジックの技術はビジネスにも通じる。あの「超魔術」を操るMr.マリック氏がグッズの実演販売員をしていた頃、どうやって人の心の掴み、集客に成功したのかを教えます。

※本記事は、Mr.マリック:著『超魔術の裏技術』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。

グッズを全く売れない実演販売員だった

高校卒業後、いったんはメーカーに就職したのですが、間もなく辞めました。マジックへの思いが断ち切れなかったのです。稼げないとしても、好きなことをやって生きていきたい──。私はマジックグッズの実演販売員になりました。

デパートのフロアの片隅。ショッピングをしているお客様に声を掛け、マジックを実演して見せて、グッズを買っていただくわけです。

これが全く売れない。マジックに興味があるお客様であれば、実演を見てくれるし、購入してくれる可能性もあります。しかし、興味がない人にとってはマジックグッズなんて無用の長物。何の役にも立たない代物です。デパートにショッピングに来たお客様の足を止め、実演し、話をし、挙句の果てに購入してもらうなんて至難の業なんです。まるで、砂漠で傘を売るようなものでした。

暇つぶしにマジック実演は見ていってくれるものの、グッズを売りつけられるんじゃないかという警戒心をみんな持っているのです。だから私の正面に立ってくれません。いつでもその場を去れるように、つま先は進行方向を向いているのです。つまり、斜めの姿勢で遠巻きにマジックを見ているわけです。

それでも何とか、お客様の心を話術でほぐしながら、マジックの実演をするわけですが、タネがありますから商品には指一本触らせることはできません。

興味がない、警戒心が強い、商品に触れさせない。そんな壁をすべて取り払って、最終的にお財布を開いてもらう。しかもマジックグッズは結構値が張る。これはかなり大変なことなんです。本当に全然売れなくて、私は毎日頭を抱えていました。