豪壮なバロックから優美なロココへ

バロック様式は、古典様式にダイナミックな躍動が加わり、内装が豪華で装飾的で曲線が多く使われる。ロココは細かく繊細な装飾に特徴がある。

現在のサン・ピエトロ大聖堂は、2代目で1626年に完成しており、ドナト・ブラマンテ、ラファエロ・サンティ、ミケランジェロ・ブオナローティらが設計に参加した。内部にはミケランジェロによる高さ132mの見事な半球ドームがある。

サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂は、コンスタンティヌス1世が312年に建築した初めての本格的キリスト教聖堂であるが、16~17世紀にフランチェスコ・ボッロミーニの内装や、ガリレオ・ガリレイの新たなファサードのためにバロック風となった。

▲サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂 イメージ:PIXTA

ヴェルサイユ宮殿は、1682年にフランス王ルイ14世が建てたバロック建築の代表作で、ヨーロッパの宮廷建築に影響を与えた。設計は主にフランソワ・マンサールとシャルル・ルブラン、庭園はアンドレ・ル・ノートルによる。とくに「鏡の間」が絢爛豪華だ。

『ハリーポッター』の撮影に使われたラドクリフカメラは、オックスフォード大学の図書館として建設され、愛らしい円形図書館のオックスフォードのシンボルのひとつである。

▲ラドクリフカメラ イメージ:PIXTA

サンクトペテルブルクのエカチェリーナ宮殿は、エカチェリーナ1世に由来する。1756年に改築して現在の姿となった。イタリア人建築家バルトロメオ・ラストレッリよるロココ様式で、琥珀(こはく)で埋め尽くされた豪華絢爛な「琥珀の間」が有名である。王妃マリー・アントワネットが田園生活を楽しんだプチ・トリアノンは、ヴェルサイユ宮殿内の庭園にある離宮。新古典主義建築だが、内装はロココ様式の最高峰とされる。

設計はアンジュ=ジャック・ガブリエル。ハプスブルク家の夏離宮シェーンブルン宮殿は、女帝マリア・テレジアの命で18世紀半ばに、ニコラウス・パカッシが現在の姿にした。外観はバロック様式、内装はロココ様式。広間はウィーン会議で舞踏会の会場となった「グローセ・ギャラリー」。

ヴィースの巡礼教会(1745~54年)は、18世紀ドイツ・ロココ建築の最高傑作で、ツィンマーマン兄弟の設計で毎年100万人以上が教会に訪れる。華やかな天井のフレスコ画は「天から降ってきた宝石」ともいわれ、兄バプティストによるものである。

中南米には豪華なバロックなどの教会が多くあるが、メキシコシティ・メトロポリタン大聖堂は、1573年に建設が始められ完成するまで250年を要した。ゴシック、ルネサンス、バロック、新古典主義などの様式が混在する。

ロシアの民族的建築の代表は、モスクワ赤の広場に立つ聖ワシリイ大聖堂。イヴァン4世の命で、ポスニク・ヤーコヴレフの設計により1560年完成。中央の主聖堂を特徴的な八つのタマネギ屋根の小聖堂が取り囲んでいる。タマネギ型ドームは、中世以降は一貫してロシアや東欧の建築を特徴づけ、バロックの建築でも継続して用いた。

※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。