解決困難なストレッサーからは「逃げるが勝ち」

「日本人は、アメリカ人よりも真面目でがんばり屋さんが多い」

アメリカでカウンセリングをしていると、つくづくそう感じます。

ストレスに対する姿勢も然りです。「解決しないであろうストレッサー」に対しても、時には「なんとかして解決できないか」と立ち向かっていくようなまっすぐさが、日本人には満ちています。

それに対してアメリカ人には良い意味での「ユルさ」が、全身から漂っています。それはまるで、完璧主義から遠くかけ離れた安全圏で「楽しく過ごしている」という雰囲気です。

自分に対しても、人に対しても非常に甘く、何かあると「ヘルプミー!」。学校でも職場でも、SOSのシグナルをすぐに上げる性癖があるので、心の病気になることはあっても、早期発見・早期解決しやすく、深刻化することは日本人よりも少ないのです。

日本人には、もう少しアメリカ人的なマインドセットになってみることを、おすすめしたいと思います。

例えばストレッサーとの付き合い方について考えてみましょう。

職場を例に出すとわかりやすいのですが、嫌な上司やそりの合わない同僚、仲間とは無理に仲良くしようと思わず「逃げる」ことです。

「話しかければ話しかけるほど、心の距離は縮まる」
「心配りや気遣いで、人間関係を少しずつ向上させていこう」

このようなメソッドを説く日本語のビジネス書を見かけることがありますが、それらは嘘。ただでさえ日本のビジネスパーソンは疲れているのに、より一層疲弊してしまいます。

気が合わない人とは、ビジネス上の最低限のやりとりが済んだら、あとはかかわらない。顔を突き合わすことがあっても、当たり障りなく振舞って、愛想笑いでも浮かべておけばいいのです。自分の本心や本音をわざわざ明かすようなことも不要です。

趣味には「再起動」的な役割もある

サイコロジストの立場から言うと、ストレッサーからはなるべく「離れる」という姿勢を推奨しています。

休憩中は、トイレや休憩室など、ストレッサー(業務や、自分の持ち場、苦手な人)から物理的に「離れる」。通勤中や、プライベートタイムに暇を見つけては瞑想に集中する。オフの日には、趣味に思いっきり没頭して、仕事のことを忘れるほどほかのことに没頭する。

例えば、休日に仲間たちと趣味のバスケットをしている最中に、職場の嫌な上司のことなど、ほんの1ミリも頭の中には浮かんでこないはずです。

このように、ストレッサーから「離れる」「逃げる」「スイッチを切る」ということをイメージしてみてください。

コンピューターだって、電源を入れっ放しだと、だんだん処理速度が遅くなっていくものです。それを防ぐために、こまめに電源を切ってreboot(再起動)するものでしょう。人間の脳も、積極的にrebootすることが大切なのです。

特に趣味への没頭は、ビジネスパーソンにとって「再起動」的な役割を果たしてくれます。真剣に打ち込み、楽しめる趣味がある人は、それだけで「強い」と患者さんたちを見ていて感じます。