怪物「タマタカ」の襲来
第2の波は玉川高島屋ショッピングセンターができた時期です。1969年にできた「タマタカ」と親しみを込めて呼ばれる同施設は、日本初の本格的郊外型ショッピングセンターでした。高度経済成長の波にも乗り、世田谷区をはじめ広い商圏内に居住するようになった富裕層を相手に、非常に良質で高感度な商業施設を運営しました。
それまで東急は、多摩田園都市の開発に集中していたことから、高島屋の二子玉川進出に全くノーマークでした。東神開発(玉川高島屋ショッピングセンターの開発運営をする会社)が二子玉川駅の西側で土地を取りまとめ、ある日突然一夜城のように出店計画を発表したときに東急は大きな衝撃を受けました。社内ではそれを問題視し、社員は新規店舗の情報収集や対策に奔走したそうです。
しかし最盛期は年間1000億円を超える売上を叩き出す怪物ショッピングセンターのブランド力のおかげで、結果的に二子玉川の知名度、人気は飛躍的に上がりました。
そして第3の波は2011年に東急が運営する「二子玉川ライズ」ができたことです。かつて遊園地があった場所を再開発してできた複合施設で、玉川高島屋ショッピングセンターと反対側である駅東口に位置します。計画が明らかになると、今度は逆に玉川高島屋ショッピングセンター側が警戒したことでしょう。
しかし、高級なラインナップは高島屋、カジュアルラインは東急が担うというマーチャンダイジング上のすみ分けができた上、ライズには商業以外のオフィス、シネマコンプレックス、ホテル、スタジオなどの西側にはない機能もあります。ライズがオープンしてから玉川高島屋ショッピングセンターの売上が激減したわけではありません。
かえって、ライズの開業によって住民数、来街者数、就業者数が増え、二子玉川全体のマーケットボリュームは大きくなりました。またライズ開業後に玉川高島屋も店舗リニューアルするといった具合に、双方切磋琢磨していけるので、全体の街の魅力度は上がり、顧客の選択の幅は広がりました。