ファンからの生のメッセージを体で伝えたスタッフ

ある外部スタッフはこう語った。

「普通は何か月もライブがなかったらモチベーションが保てないし、腐ってしまうアイドルもいる。でも、この4人はしっかりとスキルアップしてきた。6月25日のゲリラライブ、先週のあーりんのソロコン(バックダンサーとして参加)と、毎回、ステップアップしてきているし、まったく勢いが止まらない。これって本当にすごいことですよ」

たしかに短期間のうちに行われた「無観客ライブ3連戦」が彼女たちにとって、大きな転機となった。コロナ禍をプラスに転換させた稀有な例として、のちのち語られるようになっても決して不思議ではないほどの快進撃。ステージに立てる喜びと、このチャンスを逃すわけにはいかないという危機感が、とてつもないエモさを醸し出していた。

アゲ曲ではメンバーが観客を煽るシーンが見られた。リハーサルではそういう光景はなかったので、本当に「ライブのノリ」で飛び出したアクションなのだろう

▲無観客でも彼女たちの目には「お客さん」の姿が見えていたのかもしれない

会場の後方に置かれているノートパソコンには配信の模様が流されていて、視聴者のコメントも見ることができた。メンバーからは見えないけれど、スタッフはオーディエンスの反応をリアルタイムで知ることができたのだ(もちろん配信なので、若干のタイムラグはあるけれども)。それをチェックしていたスタッフが視聴者の反応を見るや、カメラのすぐ横に飛び出していって、メンバーの煽りに対して高く拳を突き上げたり、大きく左右に振ったりしはじめた。

ファンの気持ちを体現して、メンバーに伝えているのだ!

会場の最後部から眺めていて、なんかもう、涙が溢れてきてしまった。

なんてあったかい空間なんだろう。メンバーとスタッフ、そしてファンがみんな同じ方向を目指して、ひとつになっている。無観客ライブで、こんなにも「人と人のつながり」や「人と人のぬくもり」を感じることになろうとは……間違いなく、あの日の会場に「観客」の気持ちは届いていたのである。

▲この日、スタッフの多くが泣いていた。それだけ温かい空間だった